無理数のエジプト風分数分解

 どんな分数も分子が「1」になるように分解するやり方をエジプト式分数という。なぜ、このような面倒な方式になったかというと記数法の制約によるものだ(カジョリの『初等数学史』などを参照されよ)

 一例をしめします。

 この方式は一意性がないのが、問題である。また、場合によっては分母がドデカクなってしまう。
 ですが、古代のエジプト人たちがこんな複雑な代数計算をしていたのは尊敬に値する(日本では縄文時代ですからね)

 本日、朝の思いつきで、エジプト方式を改良したやり方で無理数の分数分解を試みた。
ポイントは負の分数も含めることにある。ともかくも一意性は保証できる。

 次のようなアルゴリズムで計算する。

1)もとの無理数αとする
2)はじめにβ=αー|α|を計算する。||は四捨五入である。
3)n=[1/β]を計算する。これは整数になる。[]はガウス記号である。
4)γ=β−1/nとする
5)n=[1/γ]を計算する。
6)以下、適当なところまで4)と5)を繰り返す。nは急速に増大するので20桁くらいで止める

 四捨五入がすこしアバウトな感じがあるかな。

 このエジプト式の計算結果例を出しておきましょう。


√2では「1.4142135623730950488」
√3では「1.7320508075688772935」程度にはなります。

 お約束の円周率πへの適用例。

この近似値は「3.141592653589793238462643383279502884197」となる。


 役に立つとは思えない計算法だが、古風な計算の風情をたしなみたい方(そういう閑暇を愉しむ人がいるならば)は試算してみられるといい。




【参考資料】

カジョリの本には「アーメス・パピルス」の実例で解説されている。

初等数学史 上 古代・中世篇 (ちくま学芸文庫)

初等数学史 上 古代・中世篇 (ちくま学芸文庫)