ねじくり立体の表面積について

イカネ、螺線の類は非常に多いがネ、第一は直線的有則螺線サ、これは玩弄おもちゃの鉄砲の中にある蛇腹のような奴サ、第二は曲線的有則螺線サ、これはつまり第一の奴をまげたのと同じことサ、第三は級数的螺線サ、これは螺線のマワリが段々と大きくなる奴サ、第四は不規則螺線サ、此奴が実にむずかしいのだ、メチャメチャに蚯蚓みみずの搦み合たようの奴だ、まだこの外に大変に螺線の類があるのサ、詳くいえば二十八通りの螺線があるよ、尚詳しくいえば四万八千ぐらいあるのだがネ、君が幾何学的思想に富んでいればじきに分るのサ。

 幸田露伴の創造したねじくり博士の言でありますね。

 前段で導入したねじくり角錐、一般的にはねじくり立体を媒介変数で表現することから再開しようと思います。

 三角形をベースに考えてまいります。空間内の三角形の三点を次のベクトルで表す。

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 そうすると三角形内の任意の点Pはこうなります。

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ここで、0≦ α, β, γ≦1また、α + β + γ=1とする。

 これからは(単位円に内接する)正三角形に限定して、その高さhとしよう。高さ方向にはz軸です。回転係数ωに比例して正三角形はZ軸をクルクル回る。その変数をtとしよう。

  頂点座標はこうなります。

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さて、3次元空間での形状を示すには、その表面を描画することになります。この場合は、三角形の三辺を表現することにほかなりません。

  α=0 and β + γ=1

       β=0 and α + γ=1

        γ=0 and α + β=1

の三ケースを連続表示すれば、三辺となります。

 かくて、h=1, ω=10の場合の立体図が生成できます。まるで、アイスクリームのような形状ですね。

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下から見上げると三角形から生じていることが確認できます。収縮はゆっくりなのではみ出しています。

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 ぜひ、試したいのが回転係数が大なるケース。

例えば、ωが100あたりではどうなるかでしょう。

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ひだが識別できないくらいの螺旋形状です。

下から中身を覗いたらこうなります。回転が急なので裏側がすべて見えないようです。

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  ちなみに、このようなベクトル関数を定義すれば、正三角形の辺は表現できます。

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  こうなっても三角錐の体積と同じになるのが不思議です。しかしながら、(側面の)表面積は違います。

  表面積の計算にはガウスの第二形式を適用します。

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 n角形の場合、この根号は辺方向のベクトルの微分と高さ&回転方向のパラメータtの微分外積の大きさになります。

 k番目の辺の面責素を計算しましょう。

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以上より、外積の大きさを算出すれば被積分関数が出せるわけです。

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 というわけで、上と同じ正三角形で高さh、回転係数ωの被積分関数は下式になります。

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tについて0から1まで積分した結果が側方表面積になります。

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めちゃ、複雑ですね。ωが増えると増大することは一目瞭然ではないですが、変化するのはわかります~。