アペリーの定数に挑む

 バーゼル問題に決定的な貢献をしたのは、例によってオイラーだった。バーゼル問題とはよく知られた以下の級数の無限和を求める問題のことであります。

 上記の和はこうなることを証明したわけだ。知っている人は訳知り顔で頷くであろうし、知らない人には驚きの結果であろう。自分はなんど見ても驚きの感を覚える。

指数が偶数であればベルヌーイ定数で一意的に示せるわけであります。

πは円周率でRkはベルヌーイ定数に比例する数=有理数であることをオイラーが証明してから、この分野はしばらく停滞した。つまり、指数が奇数についてはこの極限和については無知同然だった。20世紀にロジャー・アペリーが現れるまでは、だ。
ちなみにアペリーは1994年に逝去しているので歴史上の人となった。

 アペリーはζ(3)が無理数であることを巧妙な方法で証明したのであります。
 ここまでは前座だ。

 自分が数値計算してみたのはR3に関することであります。

つまり、としたときに、R3(以後、A)が単純な数(なにをもって単純かは難しいところ)に置き換えられるかどうかを10000通りまで計算してみたのであります。
 結果から報告すれば、発見できなかったのでありますな。しかしながら、良好な近似値があることはわかった。


「単純」の定義はs,m,nを整数として下式のような表現を持つ。言い換えるとオイラーの解に見習って、Aは簡単な数(出来れば有理数)で表現できるのではないかといことだ。

 これを代数的方程式への置換をベースに探索した次第。
代数的方程式への置換とは与えられた小数が代数方程式を満たすそういう方程式を構成することであります。

 近似的な例を示す前にAの近似小数20桁を計算しておくことが必要になる。

   A=0.038768179602916798941

 どの程度、この数値に近づけたのだろうか。以下に示すとしよう。
以下に{ n/m、p、Aの近似値 }のセットで表現する。

{-1, 26, 0.038461538461538461538}
{-(2/3), 131, 0.038769107466661838206}
{-(1/2), 664, 0.038807526285316643056}
{-(1/2), 665, 0.038778336716474065418}
{-(1/2), 666, 0.038749212914606426900}
{-(7/16), 1684, 0.038768173184097556009}
{-(5/13), 4677, 0.038768061746063873578}

 p=10000までは上の7個だけが近似的といえるものでありました。とくにp=1684がヒットすれすれのファウルだ。また、「26」のケースも注目したほうがいいのかもしれない。なんといっても「1/6」と「1/30」というベルヌーイ数のあいだにあるのだから。
残念ながら、こうしたpは大きくなるにつれて出現頻度が減少する。

 計算機能力に余裕がある方々や、あるいは数値計算好きの諸兄には是非、挑んでいただきたいものだ。
万が一、Aの「単純」な表現が発見できれば、発見者の名前は数学碑に刻まれるだろうから。
そして、証明はあとからついてくる。



【参考書】
 この啓発書の50ページを参考にした。