連分数関数の実験的追求

 もろもろの数学本をあたっても、もっとシャロウなWeb情報を探索しても連分数というのはオイラー、ラグランジェやガロアの頃より格段に進歩しているわけではないようだ。

つまり、πやeを連分数で綺麗に表現できるとか、二次の無理数を近似できるとかPell方程式を求められるとか。基礎的もしくは統一的な研究はそんなところだろう。

 イントロダクション的な概論は日本版Wikiがいいだろう。

ja.wikipedia.org

 

 もっと進んだ個別の連分数について、このサイトが興味深い例を提供している。

mathworld.wolfram.com

mathworld.wolfram.com

 

 ここでは、異なる方向で連分数の坑道を掘り進むとしよう。

出発点はお馴染みの式だ。

          

これは  となる。この数値は0.6180339...である。

xを独立変数として、次のような連分数関数を考えよう。

      

x=1で最初の式になるわけだ。

これを最初の15項までの有理分数として、x=0の近傍でテイラー展開したのが下式だ。

明らかに収束しない級数になっている。

x=0近傍でグラフにしよう。

 これは求めようとする連分数関数ではない。

xを1/xに置き換えたものはどうか?

  x=0の近傍でテイラー展開

 x=0近傍でグラフ

ということで、明らかに欲しい級数展開ではない。ちなみにxの係数は興味深い。

{1, -1, 1, -1, 2, -3, 4, -6, 9, -14, 21, -31, 47, -71, 107, -161}

ついでにはじめのケースはSloan級数百科でも出てこない。

 

 こうした試行錯誤の挙句の果て、求める連分数関数は下式になる。

x=0の近傍で15次までのテイラー展開

 定数項が厳密解の近似になっている。

上式のx=0近傍でグラフ。y軸との交点は0.618近辺である。

 

 注目すべきことにX=0.2では急速に発散方向にあることだ。つまり、かなり不安定なふるまいをする連分数関数であることが推測される。

 

  今回判明したのは連分数関数での級数での収束性は保証されていないことだ。

その事例を見てみよう。

簡単のために下記のような連分数記法を採用しておく。

次の連分数関数の有限項のテイラー展開を考える。20次までの(1-x)^nである。

この関数はX=0.2付近で発振するのだ。

 

 もう少し、この挙動を追跡するとこうなる。項目の次数を5,10,15,18,20と変化させている。次第に不安定になり、18次で発振が始まる。

 x=0まではおとなしいのだが、x=0.2近辺になるとこの連分数関数は挙動がカオス的になってしまうのだ。

 これでは関数論的に意味のある定理を求めるのは難しそうだ。従来の級数への分解により収束性を判別してゆく手法は修正しないと適用が困難そうなのだ。