調和数Hnにまつわる数学パズルで傑作とされるのが、毛虫の問題がある。
ゴムの左端に毛虫がいて1m先の右端を目指して、秒速1cmで移動を開始する。意地悪な悪魔がいて、1秒ごとにゴムひもを1m伸ばすとする。毛虫Wは大きさは無視する。毛虫は不老不死でど根性あり、ひたすら伸び続けるゴムの右端を目指して移動するとしよう。
以下、クヌースの『コンピュータの数学』からの参照だけど、Wは1秒這うと右端から99%まで来る。つまり、伸びて2mとなったゴムのうち2cm進む。さらに1秒ではWは4.5cm進み、残りは295.5cmということになる。
では、何秒後に毛虫は右端に到達できるであろうか?
ちょっと意外であるけれど、永遠に到達できなないわけではない。
その求め方は下式である。
つまり、1を超えるnの値が求める数値であるわけだ。
答えは、おおよそこうなる。
1.5092688622113788324*10^43
10の43乗秒だ。つまり、4.7☓10^35年かかることになる。宇宙の寿命より長い。
ちなみに、γはオイラーの定数である。
ここでの独自なセルフ課題は連続化できますか、ということになる。
1秒毎という離散時間ではなくて、連続時間での問題にできるか、ということだ。
左端を原点として、t秒後の右端の位置 L(t)=t+1 となるのはいいだろう。
毛虫の位置の方程式はこうなるようだ。x(t)は毛虫Wの位置であります。
ベルヌーイ型の線形微分方程式だから、解析解は得られる。しかし、t=0で特異点があるので、少々小細工した。
x(t) =1/100 ( t + t Log[t])
よって、x(t)が L(t)=t+1 ゴムの右端の位置と重なる時を求めることになる。
1/100 ( t + t Log[t])=t+1
厳密な解は得られないタイプの方程式だ。数値計算に頼るしかない。
数値計算で t=9.88903☓10^42となった。離散時間で扱うオリジナルの解とオーダーは一致している。
HnがLog nとほぼ等しいことからも当然の結果かな。
【参考文献】
クヌースの離散数学の新しい版が今年翻訳された。半分以上が数論の説明だ。
毛虫の問題はこの本の206ページにある。伝説のコンピュータ・サイエンティストであるクヌースは健在だという。
もともとはマーティン・ガードナーの数学パズルで見かけた問題だったが、まだ、どこにあったか見つけていない。