円分体の生み出すパターン

 円分整数はクンマーがその才智をつぎ込んで研究した。膨大な計算によって円分体の構造を突き止めた(ようとした)エルンスト・クンマーは代数的整数論の礎石を築いた数学者の一人である。ワイエルシュトラスクロネッカーと並ぶドイツ数学の代表存在である(三人の中では目立たないかもしれない。複素関数論ではワイエルシュトラスは何かにつけて引用されるし、クロネッカーはそのデルタで有名だから)
 円分体は複素平面上の単位円上の等分点を整数に加算してできる加減乗除に関しての集合だ。もともとガウス虚数を整数に含める方向で創造したガウス整数が発端にある。

 どのような体についての計算がクンマーによりなされたのか?

ζはここでは5次の円分体をもたらすものとする。

係数は各自下記を動かすようにしてみよう。整数値の範囲で動かすのだ。


その結果を表示する。

 もちろん、複素平面での点であります。
 五角形の対称性が見て取れる。なんとなくX線による結晶解析の画面に似ている。
ノルム情報を付加して細工するとこんなパターンに変形できる。

 これをいくらでも複雑にすることは可能だ。今はp=5のケースの代数的整数を一瞥したわけだ。

 クンマーは、こういう体の計算を素数ごとに円分整数の素因数分解一意性を各個撃破=証明していった。
 目指すはフェルマーの大定理だった、そして、途中まではうまくいったのだ。p=19あたりまでフェルマー予想を確認&証明した。一安心したのもつかの間。p=23では一意性が成立しない。引き続いて反例が山ほど出て来るのだ。クンマーの意味で一意性分解できる素数を正則と呼び、それ以外の素数を非正則と呼ぶことになる。
 p=23は非正則の素数の第一号だった。
 円分整数で素因数分解の一意性が成立しなくなっている素数の集合があったのだ。
 高木類体論はこの延長に生まれることになる。

【参考書】

 上記の歴史を簡単に紹介している参考書群。

フェルマーの大定理―整数論の源流 (ちくま学芸文庫)

フェルマーの大定理―整数論の源流 (ちくま学芸文庫)

19世紀の数学 整数論 VIIa (数学の歴史―現代数学はどのようにつくられたか)

19世紀の数学 整数論 VIIa (数学の歴史―現代数学はどのようにつくられたか)