20世紀最高のカップルシリーズ。
ドイツ哲学界の大器マルティン・ハイデガーとやがて政治哲学で華開くハナ・アーレントの関係は、
やはり物見高いやじうま根性をそそるものがある。
1920年後半、正教授になかなかなれなかったハイデガーは、学生のハナを恋人にしていた。「緑のハナ」と呼ばれて男子学生の人気ものだったという。
就職にゴタゴタがあったハイデガーは、次第に頭角をあらわす。この時期、ヤスパースとも親しく交流している。
フッサールの強力な推薦があってフライブルグ大の師の後任となるのが、1928年である。
1930年代にはハナとの関係は終わり、さらにナチの台頭がある。ユダヤ人であったフッサールは表現の自由を奪われてゆく、同じくハナ・アーレントは亡命の道を選ぶ。ヤスパースはドイツ人であったが、ナチの非協力者とみなされ圧迫を受ける(田辺元はわざわざこの時期にヤスパース生誕の祝電を打つ)
一方、ハイデガーはナチのシンパとなりフライブルグ大学長になる。すぐに辞任したが。フッサール家はハイデガーとの縁を切る。師の葬儀には参列していない。
ドイツの敗戦後、ハイデガー処遇が連合軍の問題となる。アメリカの文化的アドバイザーとなっていたハナ・アーレントは、彼と再会し、当初は難色を示していたが、昔の恋人への措置を緩和する方向で
努力する。だが、旧友であるヤスパースはアーレントの精神的岳父でもあったが、生涯ハイデガーを信用することはなかった。
あの時代相のもとでの人間関係はほんとうに興味深くあります。
- 作者: エルジビェータエティンガー,El〓@7AC1@zbieta Ettinger,大島かおり
- 出版社/メーカー: みすず書房
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