超越実在とのコミュニケーション

ヤスパース哲学をつうじて、超越実在とのコミュニケーションの可能性を探るとしよう。
 ヤスパースは近代における真理への哲学的、科学的探求は失敗したと考える。将来的にもその把握は困難とみなす。
 超越実在は人類の知性に理解不可能な暗号を用いていると哲学者は考える。
 その了解にいたるには「暗号解読」が不可欠なのだ。暗号は仮に数学的な原理に基づいているとしよう。
 自然界におけるノイズは超越実在からの暗号であり、それは解読されるのを待っている。最新の素因数分解による暗号の生成・解読アルゴリズムが、超越実在からの暗号解読に有用かどうかは、先験的には不明である。
 超越実在の暗号は根本的に異なる暗号化方式をとっていると仮定したほうがよい。それも人類のいかなる自然言語とも異質な記号体系で語るとみなすのが妥当であろう。

 そうなるといかなる知性も超越実在とは交信できないのではなかろうか? そんな不満がでてこよう。それはそうだ。超越実在が、われら人類のようなプリミティブな知性に関心がなければ、その暗号系は解読の可能性が皆無であろう。
 だが、その逆であればどうか?
超越実在が、貧弱な知性にもあまねく関心をいだき、敷居を乗り越えられる知性には語りかける、あるいはそのことばを理解することを許すとするならなばどうであろうか?
 解読の可能性が拓かれてくる。
それはどのような語りかけであろうか?


哲学 (中公クラシックス)

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