ロバート・バートンの『憂鬱の解剖学』(The Anatomy of Melancholy、1621年) はさながら目の覚める心地のする奇書である。英国文学の伝統と奥行きには、夏目漱石ならずとも敬服するが、その一つの典型がこの本だ。
17世紀において、ギリシア・ローマ古典期から近世までの憂鬱に関する文献を博捜し、その文芸的かつ医療的な見識を披露するというextravaganzaは、おそるべきものがある。
その精神史的な孤高性は言うまでもなけれど、やはりジョンブル的な畸人気質が遺憾なく発揮されていることに瞠目するのである。
いやはや英国人というのは食えない奴らだが、古今無双な民族気質の持ち主だと、極東の倭人である自分は感心することしきりである。
DLマーケットで、このほど原著pdfが入手できるようになったので、extravaganzaの片鱗なりとも味わっていただきたい。