広大な宇宙に異星人文明の存在証拠がなぜ見つからないのか。電磁波通信が可能な文明ならば、何千年前何億年前から「オズマ計画」のようなことをやっていてもおかしくないだろう。だけど、受信される規則的な信号はパルサーだけだ。
この議論の大前提は、地球は特別なものではないという自然科学の常識がある。太陽系のような知性体を育む恒星系が唯一無二だというのは非合理だ。それ故、宇宙には無数の文明がありえるはずだ。
ところが宇宙は沈黙している。それはどうしてだ?彼らはどこにいるんだろう?
とフェルミは仲間の研究者に半世紀前に問うた。
これがフェルミ・パラドックスの由来だ。
一部のUFO宇宙船論者を除き、理屈っぽくて生真面目な人間はこの問いかけを反芻している。
なにを隠そう、わたしもそうだ。自前で考えついた解答例を示しておこう。
1)オルバースのパラドックス的な解答
宇宙が無限で恒星が無数にあるなら、夜空は明るいはずだ。これがオルバースのパラドックスである。
このパラドックスは、膨張する宇宙と暗黒物質が通常物質よりも多いことで、一応決着がつけられた。
ならば、高度な文明の発する信号も光と同じように隠蔽されてしまうのであろう。
そんな文明はマバラだろうから。
2)他の文明は理解できないタイプしかない
隣国ですら理解できないのが人類だ。ましてや遠方の文明の信号が規則性があるなどと仮定してはおかしく無いか。数学ですらアプリオリに当てはまらない可能性がある。Kantが指摘したけど、幾何学が普遍的に真理に思えるのは、人間の認識機能として生まれる前に埋め込まれているからだ。だから彼らの信号も判別できるわけがない。
異星人は異なる知性の形式を埋め込まれている。それ故、本来、理解不能なのだ。
ポーランドの文明思想作家レムのSF『エデン』からの想定である。この作品はいつ読んでもインパクトあるなあ!異星人文明は了解不能だと前提しておいたほうがいいだろう。我らはつい三千年前の古代文字や文明すらも理解できていないのだから。
3)上に近いが、信号完全暗号化説
高度な文明は高度に暗号化された信号発信しかしない。しかも高圧縮されたデジタルを超えた通信技術をうちたてている。低能な21世紀文明には及びもつかない方法で情報交換がなされているのだ。だから彼らの信号も解読できるわけがない。
さて、フェルミのパラドックスの決定的な解説本としてはこれがある。出色の出来栄えといえる。危ないUFO宇宙人飛来論者は黙してこの書を読み、反論を考えておいて欲しいものだ。
広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由―フェルミのパラドックス
- 作者: スティーヴンウェッブ,Stephen Webb,松浦俊輔
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