多面体を平面に写す

 先回には「無限遠をかいま見る」と題して、平面上の直線や曲線を3次元単位球面に写像した。
その応用で、単位球面に内接する正多面体を平面に投映してみよう。


考え方は以前と逆である。

1)単位球面に多角形の頂点を内接させる(図の緑の点)
2)(0,0,1)と頂点(図の赤い点)の延長とxy平面の交点を求める(図の青い点)
3)多面体の頂点の連結情報により平面上の点を線で結ぶ

以上、考え方は簡単である。

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 正四面体から実践してみよう。
本来の3次元での形状と投映後の平面上の等価物だ。

何が起きるかは了解されたかと思う。多面体を上から強引にプレス機で押しつぶしたわけだ。

正十二面体(ドデカヘドロン)はこうなる。

12個の正五角形は11個しかない。実はこの真裏に一枚五角形が張り付いているのだ。グラフ理論で類似の図形は登場している。

 もっと複雑なものでやってみよう。
正式な日本名は不明な「ペタゴナルヘクセコンタヘドロン」をペッチャンコにしてみよう。
これならば史上初かもしれない。

結果はこうなる。

 この結果で、興味深いのは、正三角形が平面形として現れてくることだ。もとの多角形には三角形の面はない。中心で交わる三本の直線は三角形の頂点を結ぶ線で、裏側にできているはずのものである。
きっとz軸の上から眺めた時、その連結が優位になっているのであろうけど。


 多面体って数千年の人類の思索の蓄積がある。プラトン多面体やアルキメデス多面体などのグループ名がそれを示す。4次元多面体の研究まである。その本は一松信の『高次元の多面体』として気がるに読めるのは嬉しい。もっともその前に『多面体を解く』を読んでおいた方がいいかも。日本の数学書には図版が少ないのが通例だけれど、この両書とも図版がどっさりあり、楽しい。

正多面体を解く (TOKAI LIBRARY)

正多面体を解く (TOKAI LIBRARY)

高次元の正多面体 (数セミ・ブックス 7)

高次元の正多面体 (数セミ・ブックス 7)

 より総合的に学習したければ、多面体幾何学研究に一生を費やしたコセクターの名著『幾何学入門』これは古書(明治書院版)で高値だったが、文庫版などが出て入手しやすくなった。きっと先年紹介された伝記は希少価値が出てくるだろう。