有名人がレスペクトする有名人の評伝を書くのはありふれた奇跡だろう。しかし、その連鎖はそれほど長くはならない。
こんな例がある。
つまりは、近代から現代になるので書き手が生存していて評伝となりえないということもあるわけだ。書く方が小粒になるというのもあるかもしれない。
モハメッド『コーラン』←カーライル『モハメッド(英雄崇拝論)』←向井清『トマス・カーライル研究』
これなどは偉大なものから文芸名著、そしてその研究書と急速に特化している。このような3つなぎは豊富にあるので枚挙できないほどだろう。
理系の評伝の連鎖はかなり稀有だろう。他人の伝記など書くほど能筆でも多弁でもないのが理系だから。
しかし、ここでは次の系列があるのを指摘しておく。
寺田寅彦『レイリー伝』→中谷宇吉郎『寺田寅彦の追想』→東 晃『雪と氷の科学者・中谷宇吉郎』
4つ、5つとなると探すのが難しい。それこそ図書館情報学の研究テーマとなりうるだろう。