基本対称式と逆数和について慌ただしく計算した結果を少数の同好の士に贈るとしよう。基本対称式とは下記のようなものだ。
五個の項が与えられたとする。
基本対称式はそこから生成される各項の対称な式の集まりだ。
このケースでは、1を含めて6個になる。
項数nの基本対称式の数は1を含めるとn+1になる。
代数学では対称式は基本対称式で表示できるという有名な定理がある。
これを調和級数に当てはめ、極限値の傾向を探るというのが、計算動機のトリガーであります。
具体例を5つのケースで試算する。
が5項として与えられる。その時、基本対称式は上の例に倣ってけいさんすれば、
第二番目がいわゆる調和級数になる。最後の項目は5項目の積だ。
これを限りなく項目数を増やすと第二番目は調和級数で発散し、最後の項目は0に接近となる。
では、中間の基本対称式はどうなるのか?
つまり、収束するのはどの基本対称式になるのだろうか?
これがたわいない計算動機であります。それを計算により追いかける前にもっとシンプルなケースで試算してみよう。
1)シンプルなケース 自然数の冪常和
2のべき乗の逆数でどうなるかを見てみよう。
5個のケース
基本対称式のセットは
もう少し項目数を増やし、10項で同様な計算をしてグラフにしたものだ。
実は第二項は無限等比級数和で2となり、第三項は簡単な試算から4/3に収束するのがわかる。それ以外は無限項ではゼロになる。
つまり、自然数のべき乗の逆数では下記のパターンだけが有限極限値を持ち、それ以外はゼロを極限として持つ。
このケースは厄介である。数値計算も項数が100いかなくともハングアップするだ。
まずは項数が10程度での傾向を計算してみよう。
第二番目が発散するので悪名高い調和級数そのものだ。このケースでは第三番目が最大になる。
項数が30ではどうなるか。これが自分のPCの単純計算の限界あたりになる。
基本対称式の最初の10項の結果を示す。その下にグラフを提示する。
つまりは、第四番目までは調和級数同様に発散するらしい。しかし、第五番目からはどなるか8番目以降はゼロになるだろう。
初項を50項として8個の基本対称式の集計結果グラフは頂点シフトを暗示する。
続けて、初項を80項として8個の基本対称式の集計結果グラフが下図である。
こうなると傾向は明らかで自然数のべき乗の逆数のケースとは異なることが見えてきた。和のピークは調和級数ではシフトするようなのだ。
そうなると項数nに対して基本対称式のピークは何番目になるのかという次なる問題が生じそうだ。
現時点での項数nに対するピークの予測式を出しておこう [1+ Ln(n)]
ここで、[ ] はガウス記号もしくはFloorだ。この予測が正しければ調和数列の場合にはnが大きくなると[1+ Ln(n)]個の基本対称式は発散し、n- [1+ Ln(n)]個の残りの部分はゼロに漸近的に接近することになるようだ。