HardyへのRamanujanの手紙から

 このほど訳本が発売されたばかりのG.H.Hardyの著書『ラマヌジャン』(丸善)をひもといている。副題を「その障害と業績に想起された主題による十二の講義」とあり、数学的業績に関する本格的な紹介と解題になっている。
 G.H.HardyとRamanujanの遭遇は20世紀の大英帝国における3つの偉大な邂逅の一つだ。
他の2つはRussellとWittgensteinであり、EddingtonとChandrasekharである。
そんな駄言はともかく、ラマヌジャンが植民地インドからハーディに宛て書いた自己の業績を述べた手紙には120の公式が記されていたという。
 講義Ⅰでそのうちの12個を列記している。
 証明など素人目には不可能に思える14番目を検証してみる。

 無限級数を分母とする分数式をとる。


そのx^nの係数は下式に最も近い整数になる。


というものだ。
 ラマヌジャンの解、いや問題設定すらも何処からやって来たのか想像すらできない式だ(整数の分割に関するものというけれど)。

これを数値検証してみる。

まず、無限級数を分母とするする式はこう一般化できるだろう。

このx=0付近での級数展開(マクローリン展開)はこうなる。10項までの展開だ。

 気味悪いことにラマヌジャンの係数の式はこうなる。n=10までの近似式だ。

1.97897, 4.11862, 7.84836, 14.0709, 24.1039, 39.8409, 63.965, 100.232, 153.845, 231.938

 Hardyはこの式はそれほど近似式としては正しくなかったとしている。それでも真の係数式の本物の近似であったとして、この間違いから分割に関する共同研究が拓かれたとしている。
 間違いすらも天才的だったというのだ。