ハーディが残した盟友ラマヌジャンの業績の解説『ラマヌジャン』の冒頭に、こんな式が出ている。
このx,y,z,wは次式を満たす。
つまり、三次の和の式の有理解を与える。これはフェルマー最終定理と矛盾してはいない。変数が1つ多いのだから。
ハーディによるとこれは一般解ですらないので、ラマヌジャンの習作時代の手遊びみたいなものだという。
それでも、次の3次曲面でどのような有理点を与えるか、てすさびで試算してみた。
もとの式を両辺wで除算したもので、結果はほぼ同値(原点が入らなくなる)である。
3次元空間においてこのような曲面となる。
さて、ラマヌジャンの「特殊解」はどう出現するのだろう?
サンプル計算の前提は、a とbをとって、整数値で計算する。その式は
のように変形してある(ラマヌジャンの言う通り、に代入すると恒等式になっている)
a bを-40から40まで動かすとこのような解がたくさん得られる。
{5/206, 127/103, -(197/206)}, {-(15/82), 54/41, -(89/82)}, {-(5/14), 29/21, -(7/6)}
これを上の三次曲面に重ね描きしてみよう。
つまり、三次曲面の表面に閉曲線を描いているのが観察される。式の対称性を考えると
これは3つある。後で示すようにこの閉曲線は楕円である。a,bを連続的に変化させれば楕円だ。
ある意味、ラマヌジャンは三次曲面に3つの楕円を導き出していたことになる。
楕円であることを示す前に、空間中での有理解の並びを観察する。
ヒントは平面上に存在することである。そして、ラマヌジャンの4つの式x,y,z,wは
これは下式を満たすことが簡単な計算で示せる。
つまり、x/w, y/w, z/wは平面上に存在している。よって、これをx, y, zと読み直せば、
とこの平面との交差しているのが、ラマヌジャンの特殊解であることになる。
ここまで来るのに、どれだけの代数多項式計算が必要なのか、膨大な計算をインドの天才は鉛筆一本で成し遂げたのだ。
一連の数式処理で楕円であることが簡単(でもないけど)に示せるわけであります。
ハーディは三次曲面上にこんな特別な楕円があるのを認識していたかどうかはわからないが、ちょっとした数学的神秘の香りがする。
【参考文献】
20世紀最高の数学的邂逅であり。その重要なドキュメント。ハーディが捧げたオマージュが本書であろう。