江戸川乱歩の奇想小説に『鏡地獄』という短編がある。
レンズや鏡の偏執症の友人が球体鏡を製作する。内側が鏡張りの三次元球で、そこにヒトが入れるようなサイズのものだ。どんな光学的幻像ができるか想像するのはなかなかに難しい。ある人のブログで球面鏡の内部のシミュレーションを報告していたのを数年前に読んだ記憶がある。
下にYouTubeのCGを例示しておきましょう。
ともあれ、その顛末は当の小説を読んでいただこう。
ここでは平面の円での慎ましい計算を提示してみる。問題はシンプルだ。
単位円内で周上の点を発した光がどのような軌跡を描くかだ。 でも小細工をしてみる。反射の法則をイジるのである。
はじめに記号的な概念を説明してみよう。
Znはn番目の反射点である。θnは反射角というわけだ。一般にはθn=θn+1となる。Φnはx軸からの測ったZnへの偏角である。
Φnについて下式が成立するので、θnの初期値を与えれば、Znは自動的に算出できる。
結果を図示してみよう。
θn=π/7で計算する。
規則性のある星稜が生成された。まずまず、予期した形状である。
外部の円(反射面)を描画してみよう。θn=π/19
θn=π/97 中央にできる円の半径はSinθnとなる。
反射面に対してθn=θn+1であるので、規則正しく星形になった。
それはそれで興味深いが、ビザール=風変わりさに欠けている感もしないではない。
よって、この法則をいじりまくるとしよう。反射則を変更するのである。
思いつきでいい。
等差数列にしてみよう。
下式は反射のたびに反射角が15度増える。
θn=θn+1+π/12
すると、こうなる。
非整形ながら乙な形状ではある。
それなら、等比数列の反射則ではどうだろう?
θn=2θn+1
初期値がπ/7である。
\[Theta][n_]:= \[Theta][n-1]+Pi/12
初期値がπ/5である。
すごく他愛のない形状である。
しかしながら、反射則と初期値で大きく光線の軌跡が変化するのは面白い。もう少し、探索してみよう。
単純な規則で複雑な結果が出る。
こう云う奴は休日の暇つぶしには最適の計算娯楽ではあるまいか?
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- 作者: 江戸川乱歩
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