「絆」とか「繋がり」が流行語となるのにSNSやブログなどネットの存在は無視できない。いわばネットがそうした活動を生み出す場になっているし、ほとんど誰もがネットを連想するからでもある。
通信技術が社会現象となっているし、歴史のウネリともなっている。
19世紀末から20世紀初頭にかけて心霊運動が盛んになったのはご存知の方も多かろう。クルックスやレイリー、進化論のワルラスなど自然科学者やイェイツなど文学者(彼の『幻想録』は自動書記の記録)、ベルグソンやウィリアム・ジェームズなどそうそうたる思想家も参加した。
それは二通りの表現経路があった。近代への反動と自然科学の拡張だ。サイキカル・リサーチは現在も存続しているが後者であるし、黄金の暁や神智学などは前者だろう。
日本でも福来友吉と浅野和三郎はそれぞれ前者と後者の代表とみなせる。福来は「念写」で知名度を上げたし、浅野は霊界通信、つまり霊媒の示す諸現象を記録していった。
この霊界通信や自動書記は、どうも当時勃興しつつあった「通信技術」、有線・無線通信と並行して同時代的に社会現象となったような気がする。「霊界」の姿を伝える霊媒の現象も様々な「自動機械」の登場と無縁ではないように思うのだ。
いうなれば、蓄音機を見聞きして人々は「霊感」を受けたのだ。それは霊媒側もそうだし、記録側の学者や有名人もどうようだ。機械ができるのだから、ヒトもできるだろう。そんな刷り込みもあったかもしれない。
時代が降って「自動機械」が珍しくなくなると社会的な注目度も低下してゆく。
別に心霊現象の重要性や発生頻度が低下したわけでもないのだろうに。
浅野の『霊界通信』も記録は、底が浅いような感がある。代表が『小桜姫物語』だがこの戦国末期の女性の
記録は、どうも民俗性や時代諸相をかけらも示していない。時代考証をすれば三浦一族の末裔の発言ではないことが見え見えである。
なぜ、浅野和三郎のような真摯な学者が見え透いたうわ言をまともにとったか、その女性霊媒が自分の真実性をつゆも疑わなかったこともあるだろう。だが、先のような時代性もあるに違いない。
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