直線上を転がる楕円:ダサイクロイド

 円をx軸上で回転させると円周上の一点の描く曲線はサイクロイドである。であるならば、楕円を転がして出来るのがダサイクロイドである。
 ダサイクロイドは置いておいて、楕円を転がすとどうなるかを図形的もしくは解析幾何学的に試算してみよう。
 考え方はこうであります。

1)楕円でx軸の切片a=1、y軸をb=a(1-e^2)^(1/2)とする。eは偏心率であります。
こうしても一般性は保たれます。thは原点からの仰角です。
 楕円上の点(a Cos(th),b Sin(th))=(Cos(th),(1-e^2)^(1/2) Sin(th))を考える。

2)その接線の式は高校数学でも習うように次式となります。
    x Cos(th)+y (1-e^2)^(-1/2) Sin(th)=1
 ここから直線の傾きが出せるのです。


3)原点を(Cos(th),(1-e^2)^(1/2) Sin(th))にシフトする。その楕円の式はこうなる。
ここでθはパラメータである。原点を通り、x軸に接する楕円の媒介変数表示である。

 e=0.4、th=Pi/6での楕円はこうなる。


4)この媒介変数を 2)で出す傾きを使い、phi -> ArcTan[Cot[th] Sqrt[1 - e^2]]だけ回転させたものが、x軸上を転がる楕円の式となる。簡約形はこうなる。

e=0.4、th=Pi/4での楕円はこうなる。

 上図で楕円が原点で接していないのにお気づきであろうか。実はころがり分をx軸に加算している。


 これは楕円積分である。

以上が導出の流れでありました。

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 さて、このような曲線はサイクロイドを連想させるけれど、そのサイクロイドに対応する式は既に得られている。
アンヂュロイド(Unduloid)というグーグルOSみたいな名前がついているのだ。

 楕円の焦点がえがく曲線である。
x[u_,e_]:=(1-e) (F[Sn[u,k],k]+F[1,k])-(1+e) (E[Sn[u,k],k]+E[1,k])
y[u_,e_]:=(1+e) Dn[u,k]
 だが、この楕円積分を入れまくりの式は実用性が皆無であります。理論ではこうなるのでしょうが、計算しようもないのですねえ。
 そのうち、上の流れで中心の運動を導出してみます。
 さて、このUnduloidは、かのダーシー・トムソンが生物のかたちで比較検討しているだそうだ。

 というわけでダサイクロイドというダサい名前は不要であったのだ。無念であります。


 英語版はこれでも縮約版です。それ以上に東大出版会の日本語版は抄訳しすぎであるけれど、初心者には十分刺激的だった名著であります。


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ダーシー・トムソン『成長と形』(原著英語版)pdf