巨大なる複合化に突き進め

 巨大な建造物をつくろうとするとそのパーツのデザインに精度が要求される。大量に生産しようとするとやはり品質維持の精度が要求される。大掛かりなページェントが国家や権力の威信を高め、そのために巨大な複合物を呼び起こす呪術が遂行される。
スペクタクルが力の大きさと永続性を保証するかのようだ。
シュペーアはナチの(党大会)祝祭イベントと建築担当のリーダーとなった。彼はヒットラーにこうアピールしたそうだ。
「記念的建築物は廃墟を意識してデザインされるべきだ」

 レニ・リーフェンシュタールが「意志の勝利」で描き出したような虚勢と虚飾の華やかな幻惑と巨大な全体性への自我統合感といったものが埋め込まれる。

 かつて、オルテガは帝国末期であり大衆の時代の象徴と巨大建造物を評した。古代ローマコロッセオを念頭においての発言だ。その本質は現代でもそう変化はしていない。立派な本社ビルができるとその企業は下り坂にてんじる。

大衆の反逆 (中公クラシックス)

大衆の反逆 (中公クラシックス)

 何ごとか難事を遂行することで永遠を夢見るのが凡俗の民である我ら末裔の種だ。
息苦しいのは、そうした巨大性を誇示するために国民の品質精度を粒揃えしようとする
その固定概念と官僚主義形式主義思考だ。別に試験結果の国際比較や体力測定が何をなしうるかを完全に規定しているわけでもあるまいに。

鉄の檻―マックス・ウェーバー・一つの人間劇 (1975年)

鉄の檻―マックス・ウェーバー・一つの人間劇 (1975年)