万物の存続期間を推量する

ゴットの「事象の地平線」理論の応用と考察であります。

プリンストン大学の宇宙物理学者リチャード・ゴット教授は、自然物・人工物に限らず万物の寿命が、あとどのくらい残存しているかを推測する単純明快な理論を提唱した。いわゆる『事象の地平線』理論である。
 言ってみれば、先の見えない不確実な将来に可視的かつ確率的なマイルストーンを設置することを目指した理論である。

 理論の基本を簡潔に説明した後に、ゴットの理論で寿命を定量的算出してみましょう。


【ゴットの理論の概説】
 人工物や自然物に我らが遭遇するとき、その時点が存続期間の最初か最後の期間である可能性は低い。まん中くらいの期間にそれらの人工物や自然物に遭遇している可能性が大である。
 存続期間を最初期、二番目の時期、三番目の時期、最終期に4分割してみよう。
いつ最終になるかが分からないのである。であるけれど、前の議論から二番目及び三番目の時期にはまる確率は50%であろう。
 ここで、始まりと終りの期限を推算してみよう。
最初期と二番目の境目にいるとしよう。すると経過期間の3倍の寿命が残っているはずである。三番目と最終期の境目にいるならば、経過した時間の1/3の寿命が残されているはずである。これが50%の確率での存続期間の推定である。もっと確率を上げたければ切れ目を細分化すればよい。
同様に細分化するならば、95%での規則もつくれる。
 定性的に述べれば、終わりの始まりと終りの終りを推測する理論であるといえよう。
これまで長く存続しているモノは、今後も長く存続し、生まれたばかりのモノは今後短期間に消え去る可能性が高い。ゴットはこうした方法でベルリンの壁ブロードウェーミュージカルの演目の存続を予測して、ある程度の一致を得ている。



【ゴットの理論の適用例と解釈】
今後、存在が継続する確率が五分五分の期間を50%shortとLongとしよう。この間に消滅する確率が五分五分という意味だ。

この表を説明しよう。
 比較的最近の事象を意図的に選択している。みんなが注目している政権や人気グループ、超巨大ダムなどである。菅政権の余命は0.3年=2〜3ヶ月くらいとなる。嵐と民主党の存続期間は似たものになっている。一大衆の意見としては、嵐の方が長持ちするだろうけれど。
 政党の寿命が注目であろう。伝統のある日本共産党が長持ちし、民主党の瓦解は遠からずというところだ。もちろん「21世紀」のような定義付けだけで決まるものには、この理論は不向きである。
 気になるのは「世界大戦後の期間」である。これは人工物か自然物かは不明だ。歴史的な事象であるが、ゴットの理論があてはまるかどうかは未知数であるものの、22年後から次の戦争が起きうるとなっている。グローバル平和の期間が長引けば長引くほど世界大戦の到来は遅くなるのである。
 テレビ放送とラジオ放送はほぼ同時期に開始されているので、同じような存続期間になる。


 同様に存在が継続する確率が95%の期間を95%shortとLongとしよう

 比較的長い伝統をもつものをこの95%確率に含めている。50%でも良いのだが、ある意味切実感が出せるのでこうしている。
 EUマーストリヒト条約発効後を基準にしている。半年後からどうなるかだ。
国際連合に対する日本人の信頼感は「磐石」に近い。しかし、先の国際連盟があっけなくなく潰えたことを思えば、この1.7年先から危険水域というのは興味ある。
 近代オリンピックと商用電力システムの寿命の範囲が同じというのは考えさせるものがある。
イギリスで始まった産業革命アメリカ合衆国の残存期間が類似というのも示唆的ではある。

 こうしてみると歴史的な詳細さや事物の性格の差異を無視して、起原の年だけで先行きを診断するゴットの理論は、幾つかの史的仮説を提起しているように思える。

 1)同じ時期に始まったものは同じ時期に終焉する。例えば、日本の戦後体制と憲法は同じころに終焉を迎えるのは有り得そうなことだ。あるいは国際連合と日本の戦後体制など

 2)西暦と新聞、それに近代世界システムウォーラーステイン流儀)は同じものの異なる側面ではないか。これも同じ時期(10年後くらいから終りの始まりとなる)にその役割を終えるであろう。

 3)長寿であるが一見弱々しい仕組み、世界最古の木造建築=法隆寺天皇制などは意外にながく存続するものなのだろう。弱いものほど永続する


今世紀で人類は終わる?

今世紀で人類は終わる?

物理学者が真面目に文明の終末を心配しています。ゴットの説も紹介されてます。
21世紀は今世紀に終わるというタイトルであれば論理的だったろうけど。