「地獄ではすべてに値段がついている」

...と書きしるしたのは分子生物学者のシャルガフだ。
「う〜ん」と私は唸る。
1970年代に嫌世派の科学者が忌々しげに嘆いてから40年。今では、当時よりもはるかに値札があちこちに付くようになった。地獄に近づいたといえる。

 なんとならば、金融や保険の世界を見渡してみればわかろう。先物だ、オプションだ、地震保険だ、巨大事故の再保険だ、不動産REITだ。
宇宙旅行もパッケージ商品になる。
かと思えば、
医療も遺伝子レベルやでの診断と治癒ができるようになり、若返りの皮膚や臓器移植だの、憂さばらしや記憶増強の向精神薬が売り買いされる。遺伝子医療や脳科学の賜物だ。

人体市場―商品化される臓器・細胞・DNA

人体市場―商品化される臓器・細胞・DNA

アリガタヤ、有り難や! カネさえあれば何でもデキルし、許される。
地獄の沙汰も金次第とか。

 そのうち、政府や国土、人権や文化・伝統も売買されるようになるだろう。時間の問題だ。
 何ごとも値段がつけば、市場に出すことができるのだ。

ヘラクレイトスの火―自然科学者の回想的文明批判 (同時代ライブラリー)

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