科学史の研究ネタがゾロゾロ

 かつて科学史の研究においては、とくに西洋科学史の研究などというと文献の入手が、ほとんど研究の質を左右したんじゃないかな。日本のような独仏英のように科学のパイオニアの遺物が豊富に残るわけではない極東の小国として、必然的に文献からはいらざるをえないのですね。

 それはそれとして、インターネットのコンテンツ充実ははからずも、いまさらながら科学史分野にも大きな利便性をもたらしている。
 専門書や研究書をamazonで発注したり、論文プレプリをgetしたり、図書館のカタログを検索できて、さらに取り寄せたりするのは、必当然として。
 いまでは、第一級の資料や原典が無償でダウンロードできるのようなのだ。そのためのIAやグーテンベルグ、OpenLibなどがある。だけれども、価値のあるのを探すのはけっこうめんどくさい。

 ここでの漫遊がいいというのが、最近の結論である。有料のではなく無料のコンテンツが注目なのだ。言っちゃ悪いけれど、有料のはどうでもいいものが多い。

 こんなタイトルが並んでいる。たぶん、研究者垂涎の書ばかりではないかな。

アグリコラ デ・ラ・メタリカ
フリードリヒ・ガウス 全集
J.C.マックウェル 科学論文集
ジョージ・サートン 論文集
スミス&三上義夫 日本数学の歴史
T.L.ヒース ギリシア数学史
ホイタッカー エーテルと電気の歴史
ソーンダイク 魔術と実験的科学の歴史
ムーア 倫理学原理

 アグリコラ『デ・ラ・メタリカ』なんて国内では一流大学の図書館にしかなかったし、おまけに禁帯出だったろう。『デ・ラ・メタリカ』はドイツ中世後半から近世の鉱山技術の図解豊富な資料なのだが、科学技術史では必ず「どーだ、すごい本だろう」的な扱いの書であった。いわばこれを持つだけで研究者のなかま入りみたいな本だった。
 ソーンダイクの本は「魔術者たちは最初に実験を試みた人たち」であり、実験科学の発生の根幹は魔術にあったという主張をしている。(と村上陽一郎は紹介していた)ラディカルな本だ
 他にもカジョリやピアソンの本が並んでいる。自慢ではないが、どれも読んだことはない。
 これらはなかなか入手しがたき一級資料だろう。
 なかにはルイス・スペンスやブラヴァツキー夫人など頭のおかしな書物や神道など宗教系の書物もあるが、その乱雑性には目をつぶろう。

 自分で探すのを省力化したい向きにお勧めである。
 実はこのオフィス・プラトーは知人の開設した会社なのだ。代表のおハナシによれば、著作権の切れたものをベースに品揃えを増やし、今後、ニュートンのプリンキピアやフックのミクログラフィアなどのヨレヨレの古本を開示してゆく予定だとか。

 ちょっと呆れた懐古趣味だが、健闘を心より期待したい。

思想史のなかの科学 改訂新版 (平凡社ライブラリー)

思想史のなかの科学 改訂新版 (平凡社ライブラリー)


科学史の逆遠近法』
 ソーンダイクや神秘主義の役割の再評価をしている代表作。魔術と科学は連続して発展したというのを遡及主義というのだそうな。
 自分などはラディカルな遡及主義派であるやもしれぬ。魔術と自然科学はその本質において差がないという...。
 科学も魔術も、いや宗教すらもやっていることはそんなに違わないんじゃないかなあ。

科学史の逆遠近法―ルネサンスの再評価 (講談社学術文庫)

科学史の逆遠近法―ルネサンスの再評価 (講談社学術文庫)