驚いたことにヤコービの『楕円関数原論』が翻訳された。アーベルと同世代の高等数学計算の鬼才だ。ディリクレとルジャンドルの友人でもあり、19世紀数学の黄金期を担った一人であります。
なぜ、テッカマン? 19世紀後半、ドイツにも革命騒ぎがあった時、プロイセン王家から年金を受給していたヤコービも止むに止まれず若者達の熱狂に参加した。王政の妥当を叫んだわけだ。
騒ぎは不発におわり、ヤコービに年金がなくなったのは無理からぬことであろう。
ところで、考えてみると日本は恵まれた国だ。和漢洋の名著が自国語で読める。欧米以外の国で自国語でこれだけ幅広く翻訳がある国はきわめて珍しいと断言してもいいだろう。
中東の金持ち諸国も東南アジア諸国もインドも中国も、欧米や東洋の書籍を自国語で読もうとすれば数は限られるのではなかろうか?
だからエリートは英語ペラペラなんだと思う。
日本は明治開化から150年以上にわたってせっせと海外文化の消化と紹介に大きな精神エネルギーを費やしてきたのだ。
それ以前の杉田玄白的努力の積み重ねもあったしね。
数学に限ってもギリシア数学の古典はエウクレイデスやアルキメデスだけでなくアポロニオス「円錐曲線論」まで一応翻訳されている。中国数学についても九章算術(きゅうしょうさんじゅつ)などが江戸期以前から伝わり漢文で読める(読めるヒトにはだが)。
インド数学も数点翻訳された。アラビア数学も何点か翻訳されている。
かのニュートン『プリンキピア』も世界の名著版で紹介されてるし、チャンドラセカールの注釈本もある。
そう言えばシュプリンガーの日本での専門書の売上は英語圏につぐものだと数年前に聞いたことがある。
英語圏ドイツ語圏フランス語圏についで、これだけタイトル揃った国は日本だけではなかろうか?
スペイン、イアリア語圏も有力な翻訳文化を持つかもしれないが、多分、中東古典をのぞけば日本がタイトル数で勝ると予想する。
諸兄よ、じゃによって、その特権を満喫しようではないか。
- 作者: カールグスタフヤコプ・ヤコビ,高瀬正仁
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