最大素数発見の長〜い低迷

 どこかにも書いたテーマだけど再説しておきます。
 最大の素数は存在しませんが、人類が知っている限りでの最大の素数というのは存在します。
 その最大素数の発見競争はある意味、ITの集大成であります。発見アルゴリズムとネットでの分散コンピューティング、投入されるマシン台数などが一丸となって、ようやく「この巨大数は素数なり」と判定されるわけです。すべてのIT技術の粋、数理知性の総動員の指標なのです。

 メルセンヌ素数がそのターゲットです。Mp=2^P-1のかたちで表現されます。p自身も素数である必要があります。
 ただし、どんなpでもMpが素数となるわけではありません。

 ここで注意を喚起したいのは、その発見の履歴なのです。

 横軸は素数であるMpの発見西暦年です。縦軸はMpの桁数です。
このグラフから読み取るファクトは単純です。

21世紀伸び悩みが始まり、2008年以来、最大素数の記録が更新されていない

 あれほどITの進歩がかまびすしいのに、最先端分野であるはずの素数競争は停滞中なのです。
 なんとも不思議なことです。

 もちろん、それ以前の発見の歴史は凄まじいものでありました。20世紀以降の進歩がところとどまることを知らずという歴史が下のグラフから分かります。90年代の進歩も顕著です。

 ですので、この20年間が異常とも言えるわけですし、さらには今後も最大素数のレコードは塗り替えられることは、確からしいことです。
 そうであるにも関わらず、ここで時代を先読みしたい。つまり、

ITの破竹の進歩は終わった。

 あるいはもっと大仰に表現すると、技術全体が転換点を迎えているということを読み取りたいのです。

 メルセンヌ素数の発見表



 一生をコンピュータによる素数探求に捧げたクランドール氏の代表作。
彼はフェルマーの最終定理にコンピュータ・パワーで挑みました。NEXTを数百台?つなげて虱潰しに調べた業績は有名です。

素数全書―計算からのアプローチ

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