寺田寅彦のエッセイでの映画鑑賞はこの『映画雑感Ⅳ』でラストとなる。だが、晩年に至るまで様々な雑誌に映画評論を書きまくっている。
『麦秋(Our Daily Bread)』は全編YouTubeで鑑賞できる。1934年のアメリカ映画。若夫婦が生活を田園に求め、新天地を築いていゆく。寺田の評価は低いけど、名作だ。
同じ1934年のミュージカル風の『泥酔夢(Dames)』はさわりが見れる。この手の作品を寺田は芸術性がほとんどないと考えているようだ。
そして、名作の『アラン島の男(Man of Aran)』
フラハティの記念すべき映像作品だ。モノクロとは思えない。人物は自然のなかの点景である。空や大地や打ち寄せる荒波が主人公であるかのような自然が人を圧倒するフレームで、アラン島の厳しい生活を淡々と描写する。
アイルランドの孤島の荒涼たる自然と人間模様に寺田も感銘を受けている。だが、アイルランドの自然や文化について、彼はほとんど知らなかったようだ。当時最大の文化人もそんな程度だ。無理も無いけど。イギリスの一地方くらいの認識だったのであろう。
これは珍しい伝記映画である。『ロスチャイルド』
ユダヤ系大富豪のなりたちを描いている。寺田は映画としては面白みに欠けるとしている。
『ベンガルの槍騎兵』はスペクタクル映画だ。そのイギリス風ユーモアに寺田も触れている。
続きはYouTubeで...。
こうして寺田寅彦の1934年は暮れてゆく。
- 作者: 末延芳晴
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