日本よ、甦れ!「原子炉廃炉の困難さを克服するには..」

 NHKスペシャル原発解体 〜世界の現場は警告する〜』(2009)をご覧になった方はご存知であろうけど、すでにヨーロッパの原発先進国は寿命となった原子炉を廃炉とする処理を進めている。そして、例えばイギリスでは11兆円もの税金がそのために必要とされ大きな社会問題となっている。
 それだけではない、解体された大量の廃材が放射線を帯びていて(いわゆる放射化のため)、それら膨大な廃材の廃棄場所候補がほとんど見つからないのである。
 日本では東海村の一号機の解体を着手することになっているが、ヨーロッパと同様の問題、解体の危険性と膨大なコスト及び廃棄場所は先送りとなっていると番組では警告していた。
 この度の「フクシマ」の事件で、だから言ったでしょと非難し、国や電力の先見のなさを責めるのは誰かがやってくれているだろうから、そんなことはその専門家にお任せする。
 何しろアメリカ、フランスのような原発技術先進国ですら、数十年かけても合理的な原発解体技術は確立できていないのである。ドイツなどは国力を結集して、原発解体と廃材保管を進めているのであるが、どちらも予想以上の問題を抱えている。しかも、あの地盤の安定した大地で保管場所が見つからないのだ。追い打ちをかけたのは、既存の地下保管庫に汚染した地下水漏洩が発見であった。

 それゆえ、これまでのところ、技術的な叡智を結集しても廃材の処理も容易には実現できないのである。全世界で500基以上の原発がある以上、こんなの危ないから放棄せよというのも、いまさらながらの発言で無責任であろう。

 素人なりの提言でもして、ちょっとでも国土の保全と回復に役に立とうとしたいのは、利他的な行為であろう。だから、無理なスペキュレーションであるのは承知で、(いい加減さにも目をつぶっていただき)思案した内容を記しておこう。

 原発解体にロボット技術は、有効であろう。ドイツは技術力を結集して、その応用に邁進してきた。ロボット工学に一日の長がある日本はその延長線上で頑張るしかあるまい。なによりも作業員の被爆危険性は減らすことだ。これは時間さえかければ、遠隔操作と人工知能の組み合わせで解体作業を行うようなロボットが、必ず、日本ならばできる
 むしろ、それを国・産業界のコンピテンシー、競争力の源とすべきだ。消極的に向きあうとただ単に問題を先送りするだけとなる。膨大な廃棄コストと保管コストをただ垂れ流すだけになるであろう。それは、国家破産を招くだけだ。積極的に応用技術を一から創り上げる気構えで、対応しなければならない。この貴重な経験を国内産業の活力のもとにするのである。中国・インドなど新興国は必ず原発開発を推進するし、やがてはどの国も原発を解体処理しなければならなくなるのであるから、有力な市場であることは間違いないだろう。

 その上で、放射化した膨大な量の廃材の保管なのであるが、これは一国で解決できる問題ではない。国際機関をつくること、その管理下にある「孤絶した領域」を確保することを提案したい。その孤絶した土地に放射能物資と汚染物資を集中的に保管するのである。 理想論であるのは承知。孤絶した領域に集めて厳重に格納するのであるけど、そんな孤絶した場所など有り得ないのも承知。だが、世界中あちらこちらにバラマク保管方式よりは、いくぶん、ましではないだろうか?
 この場所の候補地は、プルトニウムストロンチウムセシウムで汚染してしまって、もう使えない膨大な土地を、それを所有する国家から、提供してもらうより他はあるまい。

 これからの原子炉建設もそうだ。実は放射性廃材を廃棄するのではなく、その廃材を原子炉建築用に再利用する方策を提案したい。その廃材で「新しい原子炉」を創るのである。作業員が汚染廃材で作れるわけはないと憤激しないでほしい。その作り手は、先程の解体用に開発したロボットである。解体作業用ロボットはその作業の代償として放射化する。それゆえに、そのロボットの行き先は原発になる。*1
 その用地は、いうまでもなく「孤絶した領域」である。国際機関が管轄する隔絶した場所に、はじめから汚染した原子炉を新築するのである。汚染した場所での原子力発電というのは「毒を持って毒を制す」の発想である。NIMBY(ニンビー)は必ず起きるが、そこは和を以て貴しとなす、日本の指導力で用地を決めていただきたい。
 国家間連携のもとにここで発電される電力エネルギーを配分する仕組みが伴わなくてはならない。

 要するに高濃度の放射能で汚染した場所をつくるのだ。そこで放射能まみれのロボットが人類のために原子炉をスクラップ&ビルドしながら、原子力によりエネルギー供給する機構をつくる。

 馬鹿げたSFじみて聞こえるのは承知。原子炉をつくってしまったものは仕方がない。後代の子孫に迷惑をかけぬかたちでの保管と運用が是が非でも必要なのだ。原子力が必要悪ならば一つの選択肢にはなりえるのではないだろうか。

パパの原発 (ハヤカワ文庫SF)

パパの原発 (ハヤカワ文庫SF)

 参考までに、アメリカのロッキーフラッツ(核爆弾の製造場所跡地)の現状をご覧に入れよう。荒涼としたこの場所は立ち入り禁止になっている。核物質を作る過程でうまれた放射材は大慌てで地下に埋められただけだ。超大国アメリカですら、そんな有様での管理なのである。*2


大きな地図で見る


 ロッキーフラッツの事故や放射性物質の管理の難しさは、大昔にこの本で骨身にしみました。アメリカでもその問題が知れ渡るのがここ数年です。その昔、原子力Tシャッツでお国自慢デモをしていたワシントン州のハンフォードの住民が放射能汚染の恐怖を訴えだすのも、ようやくここ数年のことなのあります。

プルトニウムの恐怖 (岩波新書 黄版 173)

プルトニウムの恐怖 (岩波新書 黄版 173)

*1:これは解体用ロボットが同時に建造用ロボットでなければならないことを意味する。このような汎用ロボットは人型になるのではないか、ますます日本のお家芸となる

*2:ここでの臨界事故のハナシは眉唾かと思っていたら、実話だった。高木先生すいません。