あるシャーマンの写真

 極北の狂気とも呼ばれる「シャーマニズム」は日本列島に住む私どもと無縁ではない。
 卑弥呼の「鬼道」はそれとなくシャーマニズムの気配があるし、沖縄などの南島のユタは明確にシャーマンであった。北海道アイヌのシャーマンである、イムバッコは精神科医内村祐之の記録が残る。
 明治から昭和に生きた大本教の出口ナオや王仁三郎、踊る宗教の北村サヨなどが、そうした気質が濃厚な宗教家だったろう。

 ここに一枚の写真がある。1934年のモンゴル地方の男性シャーマンが、トランス(憑依状態)にある迫真的映像だ。

 この異様な身振り、そして人格性を完全にうしない、別の存在となり尽くしている能面そのものの表情は、白黒スナップショットの距離をのり超えてまざまざと迫ってくる。恣意的な演戯ではない。ナニモノかが、その肉体を支配しているのが伝わる映像だ。

 シロコゴロフやウノ・ハルヴァなどシャーマンの研究者のたちの報告が共通して伝えるところであるが、大昔のシャーマンほどその呪力は強力であったと部族は語り伝えている。現代文明のそれとはまったく異質な感受性や心性でなければ、強力なシャーマンにはなれないのであろう。

 だから、シャーマン信仰を信ずるというわけでもない。
 あえていうなら、彼らは瞠目に値する精神的資源を多大に持つのではないか。機会があれば、その潜在可能性を見極めたいとは思う。あるいはそうしたかった..というだけである。


シャーマンの世界 (「人類の知恵」双書)

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