世界の縮図=日本

 人口増大し、かつ、有限な国土と資源という制約において産業立国した国。そういう意味において、日本は世界の先行的な環境+経済モデルである。世界はヒトに満ち溢れつつあり、資源の限界が問題になっている。21世紀はその臨界にブチ当たるのだから、日本は一歩進んでいる!
 新興国の多くは日本型の発展をたどっている。というか、グローバル資本主義経済のもとでは他に進路がないのだ。
 はじめは、資源や労働力を安売りする。明治前後の日本は生糸や茶、鉱物資源などを輸出した。やがて格安労働力で繊維衣服など安い工業製品を輸出するようになる。
 先進国欧米から技術ライセンスを供与してもらい、モノマネ的な機械製品を生産するようになるのは大正から昭和初期だ。第二次世界大戦前にはやや高度な工業製品を作れるところまで漕ぎ着けた。
 21世紀の新興国であるロシアや中国、インド、東南アジアやブラジルがたどったのはこれとほぼ同じ経路であった。

 それはそれとして、ここで世界の将来と日本のイマとが相似象的なことを指摘しよう。
日本が「世界シュミレーター」だと示すためだ。

 資源枯渇:明治期には相良石油株式会社のような石油採掘がまだ夢見られた。相良油田静岡県にあった。
 石炭も国策企業として盛んに採掘された。しかし、その他の資源も含め、あっという間に鉱物資源は底をついた。軍艦島廃墟がその遺物である。


 公害問題:古くは足尾鉱毒事件、イマの四日市ぜんそくに代表される公害問題を早くも全国的に散発させる。とりわけ、水俣病は子々孫々に尾を引く汚染問題として、世界的な教訓事例となった。大規模な人体実験であった。


 放射能ヒロシマナガサキの原爆はある意味でチェルノブイリの先駆となった。東海村で臨界状態事故が起きたのはつい数年前。原発地震など天災にも恵まれてよく停止する。なんだかんだで世界に原発ルネサンスが訪れているが、今後も放射能汚染や核弾頭と人類は向きあって生きなければならない。


 経済問題:80年代バブルの崩壊は経済先進国の避けられない経路であるかのようだ。リーマン・ショックはそのアメリカ版とされたが、実体経済と乖離したデリバティブ(日本では不動産投機熱)のような仮想経済が空中分解するメカニズムは不可避の宿命のようだ。



 人口問題:日本が世界の国々に先駆けて平均年齢40以上に突入したのは10年前だ。このような高齢化した国は史上始めてだといわれている。それ以降、日本は無為無策に近い状態のまま、少子高齢化の逆転人口ピラミッド国家へ突入していく。中国やEUアメリカもやがて同じ道をたどる。

 制限のある環境・経済発展パターン・人口ピラミッドと三拍子揃って、世界の先例となる日本は国民が一丸となって「世界シミュレーション」を実演してくれているのだ。こんなエライ国は他にないであろう。 

 横浜の金沢区にある環境問題専用のスパコン地球シミュレーター」への世界の評価は高いのだが、将来的には「世界シミュレーション」のほうが素晴らしいと賞賛されることは間違いない。


追記:3月12日
 地震原発の件で、憂慮は現実となった。ここで日本人の先端技術への技量が過酷な震災によって試されているのである。実験国家の眞面目なのだ。
 これを仏教的にいえば「抜苦代受」となる。世界人類のかわりに日本人がその苦しみを引き受けていると考え、頑張ろう。この苦難から学んだ知識を、こんどは世界が日本をモノマネするのだ。あるいは神道の巨人出口王仁三郎にならって素朴な自己中心史観でもよいかもしれない。
 彼は言い残した「日本に起きることは世界も起きる」