レーヴェンハイム=スコーレムの定理の別解釈とヒルベルト

上記の定理の主張は「どのような形式的理論体系も可算モデルをもつ」のだそうな。
すなわち、勝手な解釈させてもらえば、どのような論理的装いをこらした論説も
本来の意図とは別様な解釈が可能となる。といっているようなものだ。

そもそもはヒルベルトの公理主義からして、多義的な解釈を許すものだった。
「点と線のかわりに椅子と部屋でも論証できる」とするのが公理主義だからだ。
この辺りの経緯を面白おかしく、でもまともに教えてくれたのが、ベルの数学史だ。

数学をつくった人びと 3 (ハヤカワ文庫 NF285)

数学をつくった人びと 3 (ハヤカワ文庫 NF285)

ちなみに、最近になってC.リードの「ヒルベルト」が文庫化された。この本は二十世紀最高の数学者の肖像をよく伝えてくれる。*1バケモノのような天才フォン・ノイマンに「本当に偉大な数学者」は彼だと言わしめた。

ヒルベルト――現代数学の巨峰 (岩波現代文庫)

ヒルベルト――現代数学の巨峰 (岩波現代文庫)

幾何学基礎論 (ちくま学芸文庫)

幾何学基礎論 (ちくま学芸文庫)

ポアンカレも最後の万能数学者と讃えられたが、いかんせん孤立した天才だった。
23のヒルベルトの問題を解くのが20世紀の数学者の夢だった。
ヒルベルトを核にゲッティンゲンに生まれた数学者グループは最大限の影響を世界に与えるのだ。関連する数学者の名前を列挙してみよう。

等々とちょっとでも定理や式に名を残した人びとが綺羅星のごとく、だ。

 それを伝える良書は佐々木力でものである。この本は途轍もない力作だと信じる。並みの日本人が書いたとは思えない。

科学革命の歴史構造〈上〉 (講談社学術文庫)

科学革命の歴史構造〈上〉 (講談社学術文庫)

科学革命の歴史構造〈下〉 (講談社学術文庫)

科学革命の歴史構造〈下〉 (講談社学術文庫)

 いきなり、本論にかえる。
つまり、誤解の連鎖こそが思考の歴史のカギなんじゃないでしょか。
存在の偉大なる連鎖と並立して、偉大なる誤解の連鎖が人々を動かしてきた。
記号論理学はそれを証明したのじゃないかなあ。記号論理自体もその誤解の輪廻から
遁れられないとね。

数学基礎論入門 (基礎数学シリーズ)

数学基礎論入門 (基礎数学シリーズ)

存在の大いなる連鎖 (晶文全書)

存在の大いなる連鎖 (晶文全書)

*1:ちなみにこの本は神保町で数千円(倍以上)の値段がついていた