織田作之助の『青春の逆説』ではないけれど、連分数での些細なつまずきがもたらす逆説に気がついたので書置きます。青春時代の小さな傷と同じで相克に悩むわけです。
本来は二次方程式で解けるはずの連分数の単純なタイプにカオスが潜んでいるようです。不思議っすね!
上式のような無限に続く連分数の極限値を求める定石がありますよね。
uという変数をおくと無限の連分数は有限の式になる。
これはuについての二次方程式になるので、根の公式に帰着する。
どっちの解になるかはここは気にせず、根号の中身を眺めるとします。
例えば、a=2 & b=-10 とすると根号の値は-36になります。これが逆説です。
すなわち、実数から構成された連分数が下のような複素数になってしまうのですね。
二次方程式に帰着したときに極限値の存在を前提にして有限の式に変形したのですが、それが間違いなのでしょう。つまり、無限連分数には極限値が存在しない場合があるわけですね。
どのように振る舞うのかを数例だけど探索してみた。下のような漸化式を反復させてみるのだ。
a=2 & b=-10 での最初の十項だ。
-5, 10/3, -(15/8), -80, 5/39, -(390/83), 415/112, -(1120/639), -(3195/79), 790/3037
範囲を拡大して最初の50項を折れ線グラフで示そう。どうやら一定幅で振動をしたままになるようだ。4個目の-80は何なんだろうね?
a=2 & b=-9 での最初の30項だ。予期せぬところでスパイクが生じている!
もっと探索の幅を広げて10000回の反復を行う。スパイクが時折生じ、30000を超えることが起きるのだ。
連分数の極限のふるまいは根号が負の領域ではどうやら特殊なカオスが含まれているような嫌な感じでありました。
このブルーバックス以外に新刊で入手できる連分数専門の成書はないようだ。マイナーなテーマなのだろうねえ。ガロアの定理というのも連分数論にはあるのに。