「数学」をテーマにした小説

 数学小説と名付けられたジャンルはないそうです。そう固いことは言わずに、なんとなく気のついた数学を本題にした小説をコレクトしてみよう。


1)最初に思いつくのはこのアンソロジーであります。定番です。所収の短編はほとんどSFですね。ハインラインの『歪んだ家』あたりは古典です。

第四次元の小説―幻想数学短編集 (地球人ライブラリー)

第四次元の小説―幻想数学短編集 (地球人ライブラリー)


2)数学を主題にした小説ではほぼ必然的に数学を専門とする主人公となるのですが、この風変わりな本の主人公は普通の若者です。その割に本格的な内容で、コンウェイによる数の世界の創造を扱っている。

至福の超現実数―純粋数学に魅せられた男と女の物語

至福の超現実数―純粋数学に魅せられた男と女の物語



3)SF作家で数学基礎論の学者でもあるアメリカ人ルーディ・ラッカーの短篇集です。マッドな発想は彼が哲学者ヘーゲルの子孫のせいでしょうか。
 サイバーパンクの一人でもありました。

ラッカー奇想博覧会 (ハヤカワ文庫SF)

ラッカー奇想博覧会 (ハヤカワ文庫SF)



4)日本独自の数学=和算がテーマの小説です。封建時代のふつうの少女が算数好きというのはいい設定ですね。和算を学んだ女性は、実際、かなり存在したことが知られています。

算法少女 (ちくま学芸文庫)

算法少女 (ちくま学芸文庫)



5)アボットの二次元小説は平面国のファンタジーとみなしても良いでしょうな。

フラットランド

フラットランド


6)忘れてならないのはケーガンの2作品。まるで離れ小島のような作品でありますが、まさに正統派の数理思弁小説です(個人的な評価)

ノーマン・ケーガン「不可能性の4品種」
    同    「数理飛行士」

 それぞれ下記に収録されてました。



 この他にタイトルだけ数学っぽい「素数たちの孤独」とか「四次元立方体」などという小説は数学小説には、入れてあげない。ここでの「数学小説」とは無縁なありふれた欲得が主題の俗なスートリーだから。
 また、グレッグ・イーガンがないと首をかしげるヒトもいるでしょうが、それは別の機会にまとめてみたいと考えます。

追加
 グレッグ・イーガンの『ルミナス』を取り上げる。彼の昔の短編集『ひとりっ子』の一編だ。
オルタナティブ数学をめぐる他世界とのトラブルをスリリングに描いた珠玉の逸品だ。

その深い意義をものしたので、こちらのブログ
mathmagic.seesaa.net
を参考にしてほしい。