日本の世相に感じるところを書きつらねます。
最相女史の『あの頃の未来』の時代精神をかなり共有していた私としては、輝かしい過去が遠ざかり素晴らしい未来社会は夢のままで閉じられていゆく感がしています。
90年代バブルの前までは、なんのかんの言っても、世界と日本は発展してゆくような気分が横溢していました。SFやアニメ、コミック、ゲームやそれにまつわる多くの映画もその共通感覚として「拓けゆく未来をのぞき見る」、そんな雰囲気に包まれていて、まことにホンワカした時代であったと思います。
熱気や情熱が満ちていた頃でもありました。手頃な例は『宇宙戦艦ヤマト』『機動戦士ガンダム』などでしょうか。創作ワールドの制作がリアルタイムで進行してゆくのにファンたちは自分の夢が満たされてゆく思いがあったひと時だったと思うのです。
海外SFに負けない世界制作力を持ってきたという充足感もありましたね。
日本のSF作家たちは、各自各様の閉塞感はあったにせよ(例えば文学コンプレックスを抱く初期開拓者作家は多かった)、それぞれ独自性のあるイマジネーションを紡いで、その新規性に熱狂する人びとに夢語りをしてくれていたわけです。
最相女史の本の主人公である故・星新一やその他の個性的群像である故・手塚治虫、故・福島正実、故・浅倉久志、故・深見弾などは、「未来」に対して大いなる語り部であって、往時の青少年たちにそのグランドストーリーを読み聞かせてくれた時代であった。群像たちが次第に姿を消してゆき、そうした時代は過ぎ去ったということなのです。
今となってシミジミと分かるのは、それが戦後の技術立国・日本の「青春」のひとコマだったことですかね。
Youtubeの連作動画を鑑賞ください。
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もう片方の最相女史の本『星新一・一〇〇一話をつくった人』では星新一の内面に食い込んで、孤独なオトコみたいな側面を描き出しましたが、それと別な側面が絶対あったはずです。星新一のニヒリズムはなんとなくわかりますが。
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最相女史の手腕は高く評価するものの、星新一がつぶやいていた「女は食えないもの」という断絶をこえて、その理解が彼の孤高の境地に到達していたかどうかは別物だろう。