ひょっこりひょうたん島のモデルとされる八丈島に行こう。気がるに東京から300キロ南方の離れ島に行けるわけではないので、室内で仮想旅行しようという算段である。
頼りとするガイドブックは浅沼良治『流人の島』だ。
表紙がいい。このアングルでみるとひょっこりひょうたん島に似ている。
昭和34年の出版である。副題「八丈風土記」にふさわしい古さである。
古来、八丈島は女護ヶ島、流人の島として知られる。女護ヶ島伝説は朝鮮・中国を伝わって西洋にまで伝聞された。
上記の本によれば、八丈島見聞の記録で最古は、「北条五代記」(戦国末期)であり、島の女人が見目麗しいと記載されているそうだ。
また、同島には「徐福伝説」が残る。女護ヶ島伝説もこれに由来する。
八丈島の徐福伝説を復唱しておこう。
秦の始皇帝の命を受けて、徐福は若い男女500人つづを乗せて、蓬莱島(始皇帝が不死の薬を探させようとした伝説の地=日本)にやってきたのは紀元前2世紀。徐福は紀伊半島に逢着した。しかし、男だけを乗せた男船は青ヶ島、女だけを乗せた女船は八丈島に行き着いた。1年に一度だけ交流するという。
ワンピースの「アマゾンリリー」みたいなもんである。
『梁書』の東夷列伝にはこうあるそうだ。
扶桑国(日本の古名)の東千余里に女国有り。容貌端正、色甚だ潔白。身体に毛髪有り、長さ地に委ぬ。
滝沢馬琴の『椿説弓張月』に源為朝がこの島に渡来したイキサツが書かれている。髪の長い女性がおおいとあり、そのつづきで、「きぬの布でもはっちゃうにませな。はっちゃうしかたこははっちゃう」と唱えながら機を織る女がいる。博識家の馬琴のことだ黄八丈をよく知っていただろう。いまでも島内には為朝にまつわる伝承がたくさんあるそうだ。上記『流人の島』にも髪の長い女性の写真があり、こうした身の丈の長さの髪の女が多かったと記してある。
島の方言についても『椿説弓張月』には正しい記載があるのは驚きである。
彼島にては長男をたらう。二男をじらう。三男をさぼり
長女をによこ、ニ女をなか、三女をてこ
というなどなど『流人の島』の伝える島の方言と一致している。
近藤富蔵の『八丈実記』は明治時代になってから知られたのであるから、事細かな伝説や風習に関する情報を馬琴は島の人と直接コンタクトして得ていた可能性がある。実は式亭三馬がそうだった。式亭三馬は八丈島の家の出であったという。
江戸とは深いつながりがあった。流人の島であり幕府の直轄地であったからである。流人の島として江戸時代に「遠島」の罪名で制度化されて2000人が流されたという。
グーグルマップで島内をみてみよう。
北側に八丈富士(西山)がある。854mの火山だ。山麗は優美である。
かつてドキュメンタリ『ミステリーファイル 八丈島の地下森林を探る』の舞台になったのは、この火口原であろうか。熱帯雨林が生育しておかしくない高温で湿潤な土地だ。
その南側のふもとには八丈島空港がある。陸の玄関口。周囲には植物園やら役所やらが集まっている。島の中心である。
現状では一日4便運航しているようだ。45分の空の旅である。
http://www.ne.jp/asahi/blue/marlin/access.htm
・景勝地 三根と末吉の海岸の入江や椿のトンネル、登龍峠の展望など
・天然ブロ 火山が多数ある島だけのことはあり、磯部にはここかしこと天然の湯が湧き出ている
・宗福寺 15世紀開山の古刹。快慶作の「大日如来像」の評価が高い
・南光園 これはどこかの植物園のことらしい。
・人捨穴 姥捨て伝説の残る洞窟
・宇喜多秀家の墓 関ヶ原の西側の大将としてこの島に配流された
名産は黄八丈とくさややトビウオそれにアワビなどの海産物、ロペ、それにヘゴシダがある。地元ではアワビの丸焼きが人気らしい。
ロペは観葉植物で「八丈の農家の八五パーセントが口べの生産」と向一陽が紹介している。離島で始めてできた地熱発電所が地元の電気需要をまかなう。
なお、戦争遺跡の遺構がある。
戦時中は約二万人の独立混成第六七旅団が駐留して防衛体制を固めていた。
島の中央の鉄壁山には司令部が残る。
鉄壁山かあ、スゴイ名前だ。よほど頑丈に作ったのでしょうなあ。
立ち入りが制限されているらしく、このブログでちょい紹介されている程度である。http://kotori4126.jugem.jp/?eid=36
大賀郷から二原山の中腹へ鴨川林道を登ると、鉄壁の路の標識の奥に鉄壁山(陸軍六七旅団司令部)壕がある。コンクリート造りの司令部は、出入日四ヶ所で、一ニ〇×八〇mの規模をもつ
『日本の戦争遺跡』より
B級スポットとして識者のあいだで著名なのは、「ヘゴシダ資料館」と「ホテルロイヤル」である。
「ホテルロイヤル」は前記『流人の島』では、「ホテルローヤル」と紹介されロココ様式のデラックスホテルと誇らしげに書かれているが、現在は廃墟らしい。中央の北側にある。
実際に旅行された方のブログがある。やはりナマの体験にはかなわない。
http://logicool2.blog116.fc2.com/blog-entry-313.html
参考文献
- 作者: 浅沼良次
- 出版社/メーカー: 日本週報社
- 発売日: 1959
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- 作者: 戦争遺跡保存全国ネットワーク
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