力武モデルのカオスの模樣

 地球物理学者の力武常次の遺産、地球磁場反転の力武モデルをシミュレートしてみよう。
もともと、地球磁場の履歴から磁極の移動や反転の不規則性が言われていた。しかも、千年単位くらいで揺らぐのである。この不規則性と時間スケールの短さは地球物理学のミステリーの一つである。それを二枚の円盤ダイナモで解明しようとしたのがこのモデルだ。

 力武モデルは地球古磁気の理論としてよりはカオスの理論で時おり参照されることがある。
 二枚の円盤で流れる誘導電流について非線形な連立微分方程式を書き下すことができる。

 初期値やパラメーターを与えて電流をシミュレートしてみると幾つかのケースでは不規則性を擬似的に再現できた。

X1とX2の空間で表示するとローレンツのアトラクター的な振る舞いがわかる。

 力武常次がこのモデルを提唱したのは1958年だから、ローレンツよりも5年前になる。面白いことに両者ともに地球科学の分野で生まれている。感覚的にいえば地球規模のモデルは決定論的な微分方程式モデルになってもカオス的になることが多いのだろう。それだけ、大規模な流体現象は先行きを読むのが困難だともいえよう。

固体地球科学入門―地球とその物理

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