スペインの数学

 ポーランドハンガリーにおける数学の伝統は、欧州の他国との対比においても刮目すべきものがある。それに対しスペインやポルトガルの数学学派はあまりにも日が当たらない。大航海時代にはヨーロッパの覇権を握った超大国であるのだが、いったいどうしたわけだろう。同じラテン系のイタリアはかなりメジャーな数学者がいるのだが。
 そもそも、スペイン系の著名な数学者の定理はあるのだろうか?
ちょっと調べた。
 岩波数学辞典ではスペインで引っかかるのは、12世紀ルネサンスの件だけだ。
下記の事項のみだ。

12 世紀ルネサンスとともに,アラビア語訳ギリ
シア数学およびアラビア数学がスペイン,イタリア
で大規模にラテン語に翻訳され,西欧中世はようや
く高等数学に接することになる.このころスペ
イン生まれのユダヤ人学者たちが活躍し,アブラハ
ム・バル・ヒーヤ(1070 頃1136 頃)は西欧におけ
る実用幾何学の嚆矢となる“面積の書” を残した.

これは伊東俊太郎の『十二世紀ルネサンス』にも書かれていたことだ。翻訳者系のユダヤ人の活躍だ。不幸にして15世紀にスペインからマラーノ(スペイン系ユダヤ人)は追放されてしまう。
 イスラームから国土回復した途端に、カソリック保守反動が強まるのだ。

 他の数学史を探してもスペイン系数学者に関わる業績は見つからない。ちなみに私の所蔵の数学史関連は冊数ではちょっと自慢なのですがねえ。それでも見つからない。えっ?ロドリーグの公式? これはポルトガル人の名なのですよ。

*1


 いったい、20世紀前半まで大きな業績がないなんて、なぜなんだろう?
そういえば、スペイン本国には理系ノーベル賞も物理・化学系ではいないはずだ。*2
 国民性なのだろうか。数学大国フランスの隣国であるのに、実に不思議なことだ。

十二世紀ルネサンス (講談社学術文庫)

十二世紀ルネサンス (講談社学術文庫)

*1:Wikiにはさすがに16人ほど名が出ているが、誰も知らないぞ。
Enrique Zuazuaって初めて聞く名前だ。

*2:神経生理関係のラモン・イ・カハールとかはスペインだったような。