世界的文豪レフ・トルストイの映像は20世紀初頭に撮影されており、彼の82歳での家出とその直後の駅舎での死去も写真が残されている。
言うなれば、偉人の最古の家庭ドラマがYouTubeで鑑賞できるわけである。
その妻ソフィアは、こうしたことから世界三悪妻の一人として名前を残すこととあいなった。非常の人を旦那とすることの悲劇であろう。
なにしろ、この旦那さんは伯爵家としての土地と財産と使用人を「罪」とみなし、ひいてはその文学上の著作権すら放棄しようとしたのだ。福音書に忠実であろうとした文豪は清貧と労働を説いた。貧困なるロシアの大衆層とインテリゲンツィアは、トルストイのこうした活動に敬服はしていた。
他方、ソフィアとしてみれば自分と子孫を守ろうとした「常識的」な上流階級婦人としては、その防御活動と旦那との対立はトーゼンといえば当然なのだろう。
それにもまして皮肉な出来事が彼女とその家族に起きた。
レフ・トルストイが1910年に逃避先で死去して7年後、ロシア革命が起きる。
その後の数年間でロシアの貴族階級は凄惨な運命に見舞われる。一部の亡命者を除き、ほとんど殲滅されるのだ。
ソフィアは1919年に死去していたため、その顛末を最後まで見届けることはなかったに相違ない。
だが、トルストイ伯爵家の一族は赤色テロを免れることができたのだ。レーニンとその後継者たちも文豪の自己犠牲的な思想と行為には尊敬を払っていたのだ。
常識と超越した非常識のおかげで子孫が生き延びれたというわけなのだろう。
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日本のトルストイ=北御門二郎。真面目くさった日本民族はこうしたエピゴーネンを産出する。凡百のビジネスマンよりはウンゾウ倍もまともではあるけどね。
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