ど忘れ考

 「ど忘れはアルツハイマー病の症状ではない」とあった。そこで、「ど忘れ」の「ど」とはなにかが気になりだした。
 ど忘れは度忘れとも書く。度を越したから来たのだろうか?
ど阿呆やド近眼などはこれに当て嵌まる。さらに、度し難いという意味もありそうだ。

 「度」という漢字由来のことばが日常語に入り込んだのだろうか?

 これはありそうだが、少々引っ掛かる点もある。「ど忘れ」の「ど」は度を越したというニュアンスはなさげだから。
 また、ど根性はどうなのだろうか。どえらい奴などもなんとなく、度を越したというわけでもないし、度し難いわけでもない。
 ど根性やどえらい奴は擬音語の「ど」からのものかもしれない。ドカンや漫画のタイトルにもなった「ドカベン」、ドシンなどに似た、大きさを表す擬音語的な用法ではないだろうか?
度肝を抜くというのも「度」がついているが、擬音語由来ではないかという疑いがある。


 しかし、ど忘れの「ど」は、むしろ、土壇場の「ど」に意味合いは近い。何かの瀬戸際にあるというニュアンスが込められている気配なのだ。

 時に、超弩級戦艦の「弩」はドレッドノートの略称であった。

 擬音語は奥が深い。日本語ほど擬音語が豊かな言語は数少ない。

擬音語・擬態語4500 日本語オノマトペ辞典

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 そう言えば幸田露伴翁も鳥に関する擬音語を研究されていたと心得る。露伴南方熊楠と並ぶ博識家だった。

露伴随筆集 (下) (岩波文庫)

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