驚異のEMS「フォックスコン」

 かつての家電王国・日本の面影は消えつつある。垂直統合型の製造モデルは競争力を喪失した。
EMSを使わない日本の家電メーカは赤字に追い込まれた。EMSとはElectronics Manufacturing Serviceで電子機器のOEMとODM(設計まで含む)を一括して受託する企業のことだ。
 いまや家電の世界では水平分業による生産が主導権を握り、圧倒的なパワーがある。
IT業界もそうだけどね。

 そのシンボルが中国深セン市にある「フォックスコン(富士康科技集团)」だ。
 今年11月号の週刊ダイヤモンド「家電淘汰!」を読んで、GoogleMapで調べてみた。

 40万人が働く巨大工場を見てやらねば、それを論じることもできない。
深セン市内の企業の敷地内には、なるほど工場や技術センターだけでなく、従業員の寮、病院や大学などがあるようだ。巨大工場のなかに街があるのだ。


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 週刊ダイヤモンドのジャーナリストたちは、家電メーカと政府の先見のなさを指摘している。国家戦略として、半導体通産省が舵をきったハナシや家電メーカが保守的なポイントを突いて、今年の家電赤字決算の遠因を説き明かしている。
 それはそうには違いない。だが、しょせん後知恵であろう。
 それに、EMSにアウトソースするような生産モデルでは、アメリカのように産業空洞化で雇用喪失が速攻でやってくるのであろう。
 よくぞ日本の家電はここまで国内で頑張ったというべきではないか?

 不幸にして次なる事業モデルが五里霧中だということであろう。
 日本で踏ん張るには技術レベルと品質の高さを維持するために人材力を強化する以外には手がないのだ。
 そうは言っても、人材力にも限界がある。幾つかの処方箋を考えてみた。

 1)職人の国、和の伝統国としてのデザインとヒューマンインタフェースを高度に具現した製品づくりを進める。例えばアップルの製品を見よ。

 2)ディープなネット化。エコや節電のみならずインテリジェント化を進めるには家電をネットにつなぐだけでなく、家事の相談相手や情報やモノの流通を補助する機能を進化させる。
 例えば、スマホやPCとの連携を深めるのも一つだ。

 3)得意分野での特化。テレビは末端の道具だであると心得よ。ロボットや光触媒、ナノテクやセンサー、新素材などをフルに生かした製品開発を加速させる。

これらは、しかし、小手先の事柄である。戦術レベルのアイテムであるといっていいでしょう。
もそっと先を見通した戦略が必要である。

 空振り承知で提出したいのは「文化戦略」である。
日本の伝統文化と密着した生活文化家電を世に問うのであります。
 性能や価格ではなく誰もが良しとするエコでヘルシーで美的に洗練された「ジャパン・トラディション」を国内で創造し、その素晴らしさを国民自身に満喫してもらう。そのためには国民と一丸となった製品開発を推し進め、よりよき生をサポートする電気製品のあり方を吟味してもらうのであります。
 こよなく素晴らしいライフスタイルを確立し、家電は素晴らしきパートナーとなる。よき生がよき製品を生みだすのであります。
 そのような製品を海外に売ることは人類全体への貢献であります。コモディティ化が爛熟したマーケットで戦うのではなく、別なルールで別な次元で戦うのであります。


 

週刊 ダイヤモンド 2011年 11/12号 [雑誌]

週刊 ダイヤモンド 2011年 11/12号 [雑誌]