応用数学とも純粋数学ともつかない中間領域での数学の典型は、ケーニッヒとズレクの「立方体内に投擲された球の運動」だろう。つまりは、無重力状態で無限回反射する無限小の球の軌跡の研究だ。
無重力ビリヤード台のシミュレータだと考えていただこう。
ケーニッヒ・ズレク多角形がここで導入されるのだが、そのイントロを簡潔に説明してみよう。
そのために、定義される関数はこれだけだ。線形オイラースプライン関数とか呼ばれるが、高校数学でならうような単純なものだ。Floorはガウス記号だ。Absは絶対値をとることを意味する。
つまり、プラマイ1の間で直線で、かつ、周期2の関数だ。
三次元の軌跡は媒介変数tを用いてこうなる。tの係数である速度ベクトル、aは初期位置だ。
式の係数、速度ベクトルが有理数だと、この軌跡は閉曲線になる。
逆に速度ベクトルの係数が無理数なんかだとすると悲惨な複雑さを呈する。
KS多角形の例を示す。
速度ベクトルがある有理数に比例するとボールの軌跡は閉じた多角形を描く。
というわけで、ここでのメッセージでありますが、1)のようなシンプルな周期関数から、かくも複雑な軌跡を扱うことができる数学の威力という奴を感じ取ってもらえたかどうかですね。
数年来の愛読書。著者はルーマニア系らしい。ビリヤード問題を丁寧に説明している数少ない本だ。著者は名著「数学スナップショット」のスタインハウスの弟子筋なのであろう。
- 作者: I.J.シェーンベルグ,三村護
- 出版社/メーカー: 近代科学社
- 発売日: 1989/05
- メディア: 単行本
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