死刑囚のパラドックスとは

死刑囚のパラドックスは、「一週間以内の予期せぬ日の死刑執行」判決をめぐるパラドックスである。

それはこんなふうな内容であります。
「囚人は有罪。よって一週間以内の予期せぬ日に死刑が執行されるであろう」
と判決が下った。
 囚人が死刑の判決に打ちひしがれていると弁護士が「君を死刑にはできないよ」と自信たっぷりに言う。「なぜなら、来週の最後の土曜日は執行できない。土曜日が死刑当日だと確実に分かってしまうからだ。では、金曜日に執行できるか。ダメだ。金曜日には土曜日が出来ないと分かっているので、金曜日の執行だと確実に分かってしまうからだ。木曜日も水曜日も、どの日もそうなるからだ」
 囚人はそれを聞いてい大喜び。
だが、水曜日に予期せず死刑が執行されてしまう。

 このパラドックスのミソは「一週間」というひどく有限な制約があるからだろうと思うのだ。これが24時間以内の予期せぬ時間に執行されるだろうとシナリオをちょっと書き換えただけで、大きく意外性が失われることで裏付けられるだろう。

 元ネタは戦時中のスウェーデンの防空演習だったというハナシは別として、ここで六歌仙の一人在原 業平に登場を願おう。
彼の辞世の句。
「ついに行く道とはかねて 聞きしかど
             昨日今日とは 思はざりしを」

誰でも末期は予期せぬ意外なときに訪れるのではなかろうか。


パラドックス大全

パラドックス大全