夏の必需品 怪談ばなし

そうそう。コワイ話は夏になると欲しくなるもんです。
これでも怪談集は人並みには読んできました。
最初は若気のいたりで、ラブクラフトにのめり込みました。
「ダンウィッチの怪」や「異次元の色彩」は何度となく読みましたねえ。

怪奇小説傑作集 3 【新版】 (創元推理文庫)

怪奇小説傑作集 3 【新版】 (創元推理文庫)

今は手元にないけれども月刊ペン社の三巻ものはよかった。
amazonで調べると「恐怖と幻想」シリーズなんですね。
これにのってたラブクラフトの「冷房装置の悪夢」が、夏場の冷気替わりにもってこいだったですわ。

アンソロジー・恐怖と幻想〈第3巻〉 (1971年)

アンソロジー・恐怖と幻想〈第3巻〉 (1971年)

 ラブクラフトを卒業することもなく、そのまま個性豊かな英国怪談の個別な読書に走りこみました。
M.R.ジェイムズ、この英国育ちのバリバリイングランドの学究の鋭利な恐怖はさいごにピタっと決まるんです。いわゆる形而下学的な暴力描写があるんですね。

M・R・ジェイムズ怪談全集〈1〉 (創元推理文庫)

M・R・ジェイムズ怪談全集〈1〉 (創元推理文庫)

 エリザベス・ボウエンの短編も効きます。
猫は跳ぶ―イギリス怪奇傑作集 (福武文庫)

猫は跳ぶ―イギリス怪奇傑作集 (福武文庫)

 また、ブラックウッドも「柳」はよく出来た中編でした。でもブラックウッドはそれほど翻訳も多くなく、創土社本くらいでしたね。それもやがて創元推理文庫に移植されて
いるのが最大で最後でしょうか。

ブラックウッド傑作選 (創元推理文庫 527-1)

ブラックウッド傑作選 (創元推理文庫 527-1)

こうした小説の紹介者の第一人者は平井呈一翁でした。永井荷風門下で筆禍を起こし純文の志しを捨て、小泉八雲の訳業で身を立てるわけです。
 晩年は房総の寒村(富津市の片すみ)に身を引き、コツコツと好きな英米怪談を訳す日々を送る。想えば平井翁のような文人はもういないのが寂しいですわ。

恐怖の愉しみ (上) (創元推理文庫 (535‐1))

恐怖の愉しみ (上) (創元推理文庫 (535‐1))

恐怖の愉しみ (下) (創元推理文庫 (535‐2))

恐怖の愉しみ (下) (創元推理文庫 (535‐2))

長大なシリーズになるはずでしたが、三巻で平井翁は他界されました。
この創元推理文庫は翁の冥土の土産かなあ。

 コミックでのホラーのマイナーだけど大モノは伊藤潤二でしょうね。
ホラーがグロと重なるのは悲しいですけど。マンガではグロくないとインパク維持できないかな。
この世界で、隠された恐怖を描き込める作家はいるのでしょうか?

ギョ (1) (ビッグコミックス)

ギョ (1) (ビッグコミックス)

ギョ 2 (ビッグコミックス)

ギョ 2 (ビッグコミックス)

 怖さがバーレスク(お笑い)とある作家で一体になることはママあるようです。
ミステリー作家のディクスン・カーはオドロオドロシイ設定の小説舞台に、フェル博士のようなユーモアたっぷりの巨漢探偵を登場させてます。
でも、笑いと恐怖が同じ次元に展開されている小説やコミックってあるのでしょうか?
ブラックユーモアになってしまうんでしょうか?だとすれば、何人かの才知あふれる作家がいます。ロアルド・ダールのようなね。
ダールの作品ってカニバリズム趣味が漂うのですね。

キス・キス (異色作家短編集)

キス・キス (異色作家短編集)

でもブラックじゃない、恐怖と笑いの混在はないんでしょうかね。

楳図かずおはそれらを同じ作品に同居させてはいないですが、その種の才幹が横溢してました。

へび女 (ビッグコミックススペシャル)

へび女 (ビッグコミックススペシャル)

超!まことちゃん 1 (ビッグコミックススペシャル)

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