深い悲しみは言葉にはならず、逃れようもない苦しみにはどのような言の葉も虚しい。
とはいえ、日本的な自死の伝統を振り返ることで、しばし死への想念をたゆたわせることはできよう。
我らの先祖たちは、捨身することで大衆・衆生を一切救おうと試みた。56億7千万年の時を経て、弥勒となりて下生する。その時を夢見て捨身し、生あるものたちを救済する意気や雄渾たり!
諸君ら、まさに死せんと想念するならば、その意気に感ぜよ。
「己を救うことは出来ない。ましては他人などさらなり。無情にして卑劣なる群衆にいかほどの未練やましてや温情など、そのような奇特な心がけなどさらになし。」
それは分かる。この世は「ウジ虫」だらけの苦の世界と中山みき、出口なお、北村さよらの聖なる女たちは引導をくだした。
彼女らも、そしてまた古来一死をもって無縁の苦界を生きるものを救おうとした人たちがいたのも事実なのだ。近くはKAMIKAZE特攻隊を見よ!
我らの遺伝子にはその絶対利他のミームが生き続けている。死を想念する君らもその導きによって、死への歩みを早めようとしているのだろうね。
自死は他者を利する、ある意味あまりに人間的な営為ではある。
ああ!自栽した幼なじみの君、君という呼び掛けも空々しいが、その君へのメッセージであれかし。幼年期の幸せを分かち合った君が亡きあとは、あまりに寂しい。でも、自栽することで君は残されしものたちに、豊饒なしじまを響かせた。
形而上詩人ジョン・ダンの「自殺礼賛」の逆説的な詩篇がある。「ピアサナソス」(自殺礼賛)の技巧を凝らした修辞は単純なボンクラにすぎない小生には、文字通りの自殺のすすめとしか読めないのが難点である。
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ダンのかの引用回数多大なる詩句「死よ、汝はもはやうせた、死は死に果てた」
こう表現されると我らの限界状況はひととき麻痺する感がある。
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