電子書籍と出版不況

Solutionというサービス業での「売り」のセリフがある。
クライアントである買い手に「解決」を提供するのをうたい文句にしているのだ。

さて、出版界は市場規模が年々縮小(昨年比−5%)しているのにも関わらず
出版点数は3%増えて、7万8千点にもなろうとしている。

これが最近の出版業界のNEWSだ「市場規模が2兆円割れ」
http://www.jagat.jp/content/view/1964/333/

タイトルあたりの販売部数は減少するのは当然であり、そこに投じられる出版人の労力も多くは報われないままになるだろう。個々の書籍の質にも良い影響があるとは思えない。

先のSolutionという売り方に引き寄せて論じるならば、読者が求める「解決」に対して十分な書籍を提供できるかということが問われるべきであろう。
ここで問題を二つに絞ってみよう。
 第一に、現状からすると「書籍という解決」の存在が読者に届いていない。圧倒的な販売点数や過去の書籍をひっくるめて、どれが求める書籍なのかが読者には分ならないでいる。情報が多すぎてせんたくできないというジレンマにあるのだ。
 第二に、書籍という単体パッケージを丸ごと読者は必要としているかどうか。ある部分さえ得られればいいのではないか。ある文章や節、ある短編、ある種の見解の総説だけを求めるていることも多いのではないか。無理やり全部=本やシリーズを読者に押し付けるやり方に問題はないか。

 もちろんこうした課題解消への業界の努力はなされている。
 第一の問題については、様々な試みがなされているし、一部は根づいている。
とくに有効なのは読者コミュニティサイトや口コミサイトである。これは迷える読者には大きな助けとなっているのは間違いない。
ただ、それが十分かというとそうではあるまい。口コミは「現在」に限定される傾向があるし、しかも「みんなの共通な意見」になりがちではある。読者の真の要求には応えられていないのだ。細かなニーズはベストセラーにかき消されてしまうのが落ちではないだろうか。
 やはり専門的なサービスを創設すべきなのではないか。アマゾンの勧奨システムではそれに類似していることをやっている。だが、それは質が今ひとつだ。というのは、読者の求めを何一つ入力情報にしていないのだから。他人の類似で計算されて出てくる勧奨システムのような統計的平均値的な対応では不足なのだ。

第二の問題。中身を読める努力が書店やネットショップで行われている。書店には椅子が置かれているし、立ち読みOKの本屋もある。それはしかし、じっくりと内容を理解し、情報を取り込むたいというニーズをまだまだ満たせない。
 チラ見した内容が読者の求めるコンテンツでない、たまたまそうでないことだってありえる。むしろ、そのほうが多いだろう。機会損失が起きるわけだ。
 もっと能動的に提供内容編集と切り売りをはかるべきではないか?
本や出版社を横断したコンテンツ提供を電子書籍では提供できるのではないだろうか? コンテンツ自体のオーダーメードシステムを言っているのだ。

それにしても、と考え込む。
紙そのものが夾雑物やリサイクルものに、つまり余計者に見えてくる社会にいつ間になったのカナと感じなくもない。紙幣は不用だし、新聞もかさばる、雑誌は読まなくてもいい、そんな世代が増えているのかもしれない。

 本の内容を電子化しただけでは不況を脱出できるとは思えない。読者を他のメディアに奪われつつある今日、抜本的な仕組み改変が再考されるべきなのだと思うのであります。