ぼんやり近藤+井関の『近代数学 下』を読んでいたら、アーベルの書簡で下記の日付が目に入った。
仲間うちへの手紙の茶気に富んだ表現だ。
大凡、1823.5908となることは関数電卓を持っていれば出せる。
1823年5月9日付けなわけです。
これをアーベルはどう出したのでしょうか?
三乗根をひたすらに調べたわけではないでしょう。それは手間がかかる。
推測するに、日付を小数点展開して三乗したのでしょう。けれども、試算したらば小数点9桁まで小数点を計算しないと上記の6064321219にはなりません。
1,823.590827519を三乗するのは電卓のない19世紀にあっては暇つぶしにするものではない、アーベルも数値計算の才能は抜群だったのでしょうね。
我らデジタル世代はどうでしょう。電卓をスマホから呼び出せば計算できるは確かです。便利な世の中です!
だが、関数電卓がなければどうでしょうか? 立方根を計算できるでしょうか?
対数も指数関数も立方根もない四則演算の電卓でどうすれば立方根を計算できるのか?
平方根と数値計算の反復をすれば出せないことはないですね。だけど10桁の計算は結構根性がいるはずです。確かめてみないとわかりませんが、そろばん塾の到達点の一つは立方根をだったはずですね。
三乗するのは誰でもできるのですが、立方根はなかなか計算できない。こういうのを落とし戸関数といって、暗号解読では重要になります。
立方根を含めて既知の関数は数値計算アルゴリズムはシンプルで広く知られているので、暗号には不向きのようです。「落とし戸関数」はマーチン・ガードナーの紹介で40年前くらいに日本の一般読者にも知りわたりました。日経サイエンスのコラムです。
ある制約をつけて計算が困難かどうかを判断する、三乗はできるけれど立方根が簡単ではないというような義務教育レベルでの落し戸関数もあるならば、RSAのような素数判定のような高度なレベルもある。ネタはその辺りに転がってそうですね。
このアーベルの事例みたいに落し戸関数のネタは身近にあるかもしれませんね!