数学界の帝王と呼んでも違和感ないのがガウスですが、彼が楕円関数を発見するキッカケとなったのが、レムニスケートという曲線でした。
この曲線はスイスの数学者ヤコブ・ベルヌーイにより発見命名されています。
デカルト座標での方程式を示す。
この周の長さは次の積分に帰着します。
これが、高木貞治の『近世数学史談』で「多幸なる1797年1月8日に至って,ゆくりなくも正しきもの」とした積分であります。ガウスの青年時代の驚異の年月ですね。
拡張するために極座標で表示しておきます。
円は同様な式になります。 原点が x=a/2 になっています。
一般的には、aが正で、nが有理数として、円とレムニスケートは下式に含まれることになります。 円とレムニスケートは兄弟分だというのが面白いところでしょう。
ガウスはn=2の場合の周長に興味を持ち、上記の積分値を数値計算しています。
1.31103くらいになりますね。ガウスの偉大な業績は天才と膨大な計算積み上げによっていると多くの人たちは指摘しています。
兎にも角にも下式のような円周率との類似性が関心を喚起しているのでしょう。
まず、レムニスケートの周長を出しておきます。
第一種楕円関数をガンマ関数にしておきました。
n=1 では半径a/2の円なので、円周 π aとなります。ガンマ関数を用いて変形すると
さて、n=3の曲線はどうなるのでありましょうか?
極座標の方程式は
三つ葉曲線の周長はどうなるのだろうか?
案に相違して簡単な被積分関数の積分になる。ガンマ関数を用いて下式になるようだ。
円、レムニスケートとそれに三つ葉曲線と分子が1の自然数の逆数からなるガンマ関数が意味深くも登場するのが、自分的には印象的だ。
【参考文献】
コンパクトですが近代数学の黄金期をかざる定理や式や数学者たちの織りなす人間模様が自在に語られていてます。一流の数学者のみが生み出しうる古典でしょう。
同時代のルジャンドルも楕円積分を研究し、多くの業績を残しましたが、レムニスケートの逆関数という発想がなく、ガウスに水をあけられてしまいました。
本書は朝永振一郎の『スピンはめぐる』と並ぶ理数系史伝の双璧でしょう。
座右の書の数学公式集を援用しました。おもに平面曲線の章です。レムニスケートを含むnの式も出てきます。
円と親族の曲線を比較するなんてのはググったインターネットの情報からは出てこないでしょうね。なんと言ってもアナログ書籍は知識の宝庫なんです。